後編
地域に根ざし、コラボレーションの力で価値を広げていく。
第125回放送
北陸製菓株式会社 代表取締役社長
髙﨑 憲親さん

Profile
たかさき・のりちか/1992年、石川県金沢市生まれ。金沢西高等学校を卒業後、東海大学に進学。2015年、『北陸製菓株式会社』(創業は1918年。金沢市押野。ビスケット・クッキーなどの焼き菓子、米菓の製造・企画・販売を手掛ける)に入社。生産部、営業部、企画部、経理部を経て、2018年、代表取締役社長に就任。
北陸製菓株式会社のWebサイト
| Tad | 前回に引き続き『北陸製菓株式会社』代表取締役社長の髙﨑 憲親さんをゲストにお迎えしています。前回は、経営においては何をするかより、何をやらないかのほうが大事かもしれないなということを学ばせていただきました。 |
|---|---|
| 髙﨑 | ありがとうございます。 |
| Tad | 「白えびビーバー」が大ブレイクしたというお話でしたが、他にも「のどぐろビーバー」があって、北陸でしかその2つは売らないんだということでした。他にもカレー味とかいろいろバリエーションが出ていますが、「炎鵬ちゃんこビーバー(ピリ辛塩バター風味)」という商品を発見しました。こちらは炎鵬関とのコラボですが、いったいどういう経緯でできたものなんでしょうか? |
| 髙﨑 | わたしが炎鵬関と中学校が一緒で、当時2学年下に炎鵬関がいまして、さらに炎鵬関のお兄さんがわたしと同級生だったというところから始まったんです。金沢市出身の力士で、かなり知名度もありますし、比較的小柄ですが自分の1.5倍、もしくはそれ以上の選手を土俵で転がしていくとあって相撲界ではとても有名な方です。そこで、わたしたちの北陸に特化した商品開発やPRについて話し合いまして、コラボレーションするというところにたどり着きました。 |
| Tad | この「ピリ辛塩バター風味」というのは、こういう味のちゃんこがあるんですか? |
| 髙﨑 | 炎鵬関が所属する宮城野部屋さんは白鵬さんも所属していたことで知られますが、そちらの力士さんが食べているちゃんこが塩バター味で、こういうちゃんこは珍しいんだそうです。 |
| 原田 | なるほど。炎鵬関ともご相談されて、この味に決めたと。 |
|---|---|
| 髙﨑 | はい。わたしたちも塩バターちゃんこを食べさせていただいた上で試作して、炎鵬関にも食べていただいて、意見を聞きながら商品開発を進めました。 |
| Tad | どんな意見がありましたか? |
| 髙﨑 | 塩バター味はおいしいというところまでは行けたんですが、最後に炎鵬関から「イケメンだという意味で『かわいい』だとか体が小さいなどと相撲界ではいろいろ言われているけれども『土俵の上ではなめるなよ』という意味をこめて、最後にピリ辛を追加してほしい」と言われました。 |
| 原田 | なるほど。小粒でもピリリと辛いんだと。 |
| 髙﨑 | はい。「ただし、自分はピリ辛が苦手なんです」という謎めいた楽しい依頼をいただきまして(笑)。 |
| 原田 | それを聞いたら「やっぱり炎鵬関ってかわいい」とファンの方はおっしゃると思いますよ(笑)。 |
| Tad | 「ビーバー」のキャラクターのかわいい化粧まわしも、そういった経緯でできたんですね。前回おすすめいただいたバンド、スーパービーバーさんもそうでしたが、いろんなキャラクターとのコラボが実現しているんですね。 |
| 髙﨑 | わたしたちも北陸に特化していく中で、スーパービーバーさんをはじめ、異業種の方からコラボの依頼もいただくんですが、やはり北陸に由来があったり、素材を扱うという部分か、もしくは名前でピタッと来るコラボレーションに限っています。それでも、今では世界的に有名なキャラクターさんからのコラボ依頼もありまして、「ビーバー」はどんどん育ってきているところですね。 |
|---|---|
| Tad | 北陸由来の素材というと、どういうものを使われるんですか? |
| 髙﨑 | 白エビやノドグロもそうですが、北陸は海産物がとても有名ですので「ビーバー」に関してはやはりそちらの系統に寄っていくんですが、弊社のクッキーやビスケットなどの焼き菓子ですと、「あめの俵屋」さんの「じろあめ」を練りこませていただいたり、「ヤマト醤油味噌」さんの素材を使わせていただいたり、そういうふうに地元の素敵な素材とコラボレーションさせていただいてます。 |
| 原田 | 「米蜜ビスケット」ですね。あの商品に「じろあめ」が入っているんでしたっけ? |
| 髙﨑 | はい。今、小さなお子さまのアレルギーが問題視されていて、乳、卵、小麦粉などの素材が苦手という方がいらっしゃいます。おいしいお菓子を作る上で乳や卵もとても大事な素材ではありますが、アレルギーを避けるために省いて、おいしさをもっと増していくために、「じろあめ」や「ヤマト醤油味噌」さんなどの北陸の素材を入れさせていただきながらお菓子を開発しています。 |
| Tad | 単に卵や乳の代用というだけじゃなく、さらにお菓子をおいしくできる素材でもあるんですね。そのあたりもやはり地元発、石川県発、北陸発にこだわって、全国や世界で認めてもらいたいという思いがおありなんですね。 |
| 原田 | 結構難しいんじゃないですか?それこそ乳や卵が入っているものを食べ慣れている人に「これもおいしいな」と思ってもらうためには、かなりの試行錯誤がいるんじゃないかなと思います。 |
| 髙﨑 | 原料から素材を考えて、お菓子を作ってみて、それを食べて、やはりおいしくないとどうしようもないので、最後はおいしいものを追い求めていくわけですが、今では素材をとにかく北陸にこだわることを意識しています。 |
| Tad | 時代に合わせたものづくり、食品づくりをされているのですね。『北陸製菓株式会社』が、「ビーバー」で大ブレイクして全国的にある程度知名度を獲得された今、次に目指すのはどういう姿なのでしょうか? |
| 髙﨑 | 新しいことというよりも、引き続き北陸に特化することをさらに強化していこうと考えています。もっともっと北陸の素材を使って、北陸でのPRに特化していくことが、全国で認知していただく一番の近道だと信じてこれからもやっていきたいなと考えています。 |
| 原田 | 関東に住んでる知り合いの方が北陸を旅して「白えびビーバー」を食べて、その味が忘れられなくて、お取り寄せで買っている人がいるんです。いつもそれを食べる度に北陸の旅を思い出すんですって。そしてまた北陸に行きたいなって、きっと思うんですよね。 |
| 髙﨑 | ありがとうございます。そうおっしゃってくださる方がたくさんいらっしゃって、いろんな声もいただいています。「白えびビーバー」や「のどぐろビーバー」は北陸に来た時に食べたり、買えたり、お土産に持って帰れるものとしてご利用いただいて、プレーン味やカレー味などに関しては各地ですぐに買えるように営業活動を今、頑張っているところです。 |
| Tad | いろんなところで「ビーバー」を見るようになりましたよね。新幹線で見かけたらすぐ買っちゃいます。 |
| 髙﨑 | ありがとうございます。 |
| 原田 | パッケージを見たら反射的に買っちゃいますよね。 |
| Tad | ちなみに「ビーバー」を見つけてコラボしたいという企業さんがいたとすると、それはどういうふうに進んでいくんですか? |
| 髙﨑 | いろんなパターンがありますが、わたしたちが元々やりたいなと思っているコラボもあれば、得意な素材をお持ちの方が企画開発部とわたしを含めて意見を出し合って決めていくということもあります。通常のやり方かもしれないですが、その中で一つ条件を付けるならば、くどいようですが北陸に特化する、もしくは「ビーバー」の名前につながるものがあるということです。ただ何かをとってつけたようなコラボは絶対にやらないというルールにはしていますね。 |
| Tad | ブランドを育成していく、「ビーバー」というブランドを大切にしていくために、それはプラスか、プラスじゃないかということが常に判断基準になっているんですね。 |
| 髙﨑 | そうですね。 |
| 原田 | なるほど。「ビーバー」はある程度道筋が立ってきて、もう一つ規模を大きくしてこられたビスケットとかクッキー、これについても今後はそんなふうに進めていかれるということですよね。 |
|---|---|
| 髙﨑 | はい。そういう方向性で考えていますし、そのバランスを取るということが大事だと考えています。コラボをしていくことによって新たに手に取っていただける方が増えていっても、今までのファンの方が離れていくようでは違うのではないかと思っています。今までのファンの方に、新しい味や新たなコラボレーションを通じて改めて手に取ってもらうということが第一で、その次に、新しいお客様が手に取るきっかけが増えたらいいなと思っています。 |
| 原田 | 特にビスケットはいろんなキャラクターとコラボをしていて、これも「hokka」なんだと思うことも多いです。みんなが手に取るきっかけはすごく多くなってると思いますし、もちろんおいしいですが、パッケージも魅力的ですよね。デザインにもすごくこだわっていらっしゃるんですね。 |
| 髙﨑 | デザインはかなりこだわっています。弊社のデザイナーが手掛けています。コラボする趣旨や、どういうコラボで成功させるかを話し合いながら、デザイナーがわたしや仲間たちの思いを汲み取ってデザインを仕上げていきます。それをまたみんなで確認しあって、改善点を話し合いながら完成させます。 |
| 原田 | 「米蜜ビスケット」もすごくスタイリッシュで、北欧のお菓子のような雰囲気がありますよね。これも全部自社でデザインされているんですね。 |
| Tad | これから『北陸製菓株式会社』に足していきたい機能や獲得していきたい能力について、何かビジョンはお持ちですか? |
| 髙﨑 | 焼き菓子であれば、アレルギーや添加物をとにかく省いていくことがお客様のためになると考えていますが、その代わりによりおいしくするための一つの素材として、北陸というブランドをしっかり作っていくためにもやはり北陸の素材にこだわっていきたいなというのは強く思っています。 |
| 原田 | 素材の探求も進めていらっしゃるということですか? |
| 髙﨑 | 日々いろいろな素材を試しながらどうしたらおいしいお菓子を作ることができるかを考えています。素材もそうですが、最後にわたしたちが思い描いている姿としては、アレルギーや添加物などを気にせず、おじいちゃんやおばあちゃん、小さなお子さまも含めて、ご家族全員がおいしく食べられるお菓子作りを実現していきたいなと考えています。 |
| Tad | お菓子を通じて家族の関係をデザインしていらっしゃるのかもしれないですね。 |
| 髙﨑 | はい。先輩方からは、昔は乳や卵がアレルギーの原因になるということは今と比べるとかなり少なかったとか、お菓子の表示もそんなに細かく書いてなかった時代もあったと聞きます。賞味期限の記載にしてもそうです。しかし、時代が進むにつれてアレルギーや添加物などに関して、さらに注目される素材は増えていくと思います。それを何とか北陸の素材を使いながらクリアして、全国や海外でもみんなが何も気にせずに食べることができるようなものを作って、みなさんに笑顔になっていただき、温かい場を作りたい。わたしたちのお菓子が、そんなふうに役立てられたらいいなと思います。 |
ゲストが選んだ今回の一曲
優里
「ピーターパン」
「最近よく聴く曲です。これからまたいろいろな壁にぶつかる度に仲間たちと話し合って、その壁を乗り越えていくと思うんですが、今そういうことを思っている自分に、何があろうがとにかく前に進んでいくんだっていうこの曲の思いがすごく響きます」(髙﨑)

トークを終えてAfter talk


| Tad | 今回は前回に引き続き、ゲストに『北陸製菓株式会社』代表取締役社長、髙﨑 憲親さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。 |
|---|---|
| 原田 | 『北陸製菓株式会社』の経営理念で「世界に笑顔とおいしさをお届けする」と書いてあったんですが、この笑顔というのが「おいしいね」ということだけじゃなくて「誰でも安心して食べられるね」という笑顔を目指していらっしゃるんだなということがわかりました。 |
| Tad | スポーツ選手や芸能人、アニメキャラとのコラボも伝統食品との組み合わせも、「ビーバー」だからということや、「北陸だから」の輪の中にあることをすごく大事にされていますよね。また、おじいちゃんやおばあちゃん、お孫さんが普通に一緒に食べられるお菓子を作っていきたいという髙﨑さんのお話を聞いていると、『北陸製菓株式会社』の作りたい世界というのが明確に伝わってくるような感じがしました。自社製品が作る世界と自社製品の持つ世界観、この二つを重ねながらどんどん広げていく『北陸製菓株式会社』、その次の時代へと引っ張るリーダーのお話に聞き入ってしまいました。 |