後編

期待が膨らむ「副業インターンシップ」という新発想。

第129回放送

株式会社MAKING THE ROAD 代表取締役

吉村千春さん

Profile

よしむら・ちはる/石川県加賀市生まれ。石川県立大聖寺高等学校卒業後、青山学院大学文学部に進学。大学卒業後は出版社、建設会社、放送局の勤務を経て、2007年、社会保険労務士の資格を取得。会計事務所、社会保険労務士事務所などに勤務後、2013年、『三谷山社会保険労務士事務所』を開業。2015年、『株式会社MAKING THE ROAD』(金沢市もりの里。主な事業は、人事・採用コンサルティングと採用に関する動画制作)を設立。2022年、行政書士の資格も取得。

インタビュー前編はこちら

Tad 今回のゲストは前回に引き続きまして、『株式会社MAKING THE ROAD』代表取締役の吉村 千春さんをお迎えしています。前回、あまり触れなかったんですが、『三谷山社会保険労務士事務所』って、ちょっとシンパシーを感じるものがあります。
原田 Mitaniさんと関係があるのかなと思いました。
吉村 「三谷山」というのは母の旧姓です。全国に現在、石川県と東京にしかない苗字で、「三谷山さん」という方をご存じの方はあまりいらっしゃらないと思います。
原田 逆に覚えてもらいやすいっていうのもあるかもしれないですね。
Tad 自分としても引っかかるものがありました(笑)。ところで、今更なんですが、社会保険労務士事務所って、どういうお仕事をされるところなんでしょう?
吉村 よくご質問いただくんですが、みなさんにわかっていただきやすいように「会社の人事部のような仕事をしています」とお伝えしています。給与計算や勤怠管理はもちろんなんですが、就業規則や人事制度を作ったりもします。
原田 それは社内でなさる部分を委託するということもあるんですか? 「こういうふうにするにはどうしたらいいだろう」っていうご相談を企業から受けて、お仕事をなさるということでしょうか。
吉村 はい、おっしゃる通りです。
Tad 前回のおさらいですが、2013年に社労士事務所として開業されて、2年後に『株式会社MAKING THE ROAD』を設立されていますよね。きっかけは、経営を学ぶためのスクールの中で、ある課題に向き合ったということだったんですが、それは転職というものは、実は働いてみるまでその職場・会社が合うかどうかがわからないということでしたよね。
吉村 はい、そうです。
Tad それが転職するまでに分かるようになればいいなというのが、前回もうかがった「WORK QUEST」というサービスの着眼点、着想の一つだったんですよね。考えていらっしゃったサービスとはどういうものだったんでしょうか?
吉村 「クリエイティブベンチャーシティ金沢ビジネスプランアワード」っていうところに出したとき「大人の職業体験」というタイトルをつけさせていただいたんですが、前回も申し上げた「インターンシップの転職版」っていうようなものをベースに考えました。会社側も雇用される側も互いに「働いてみないとわからない」という話をみなさんから聞くことが多かったので、一度一緒に働いてみて、お互いが「あ、合うね」と思えたら採用もしくは入社、という形をとれるサービスを考えました。
原田 転職するとなると一大決心ですし、次の職場が合うかどうか、ずっと働いていけるのかどうかってすごく大きな問題だから、不安を抱えて転職される方も多いと思うので、そういうのはあったらいいなと思います。今までそういうのってなかったんですか?
吉村 似たような仕組みというのはいろいろな形と名前であるとは思いますが、なかなか浸透していないというのが現状かと思います。
Tad 今おっしゃられた「クリエイティブベンチャーシティ金沢ビジネスプランアワード」で、なんと優秀賞を受賞されているということですが、どのあたりが評価されて受賞できたんですか?
吉村 当時の審査員の方に言っていただいたのは、たしかに今までそれをサービスにするということがなかったねと、新規性の部分で一つ評価していただいたことと、きっと世の中の役に立つねというところ。この二つを評価していただいたポイントとして覚えています。
Tad そしてそのサービスを実際にやってみたいという思いが強くなって、『株式会社MAKING THE ROAD』を設立したということだったんですが、今そのサービスについては、進捗はどんな感じですか?
吉村 実は、「WORK QUEST」という名前でスタートを切ろうと思って始めたんですが、みなさんにしっかりとお伝えし、理解していただくということがなかなかできていなくて、今は最初に思っていたようなサービスではなくなっています。実際にそのサービスとしてワークしているかというと、ワークしていない状態ですね。
Tad でも何か必要性みたいなものっていうのはあるんじゃないでしょうか。そこに対して「やっぱりこのサービスを開発しなきゃ」という思いもあるんじゃないでしょうか?
吉村 そうですね。働く人も企業も、お金と時間をかけて新しい職場を選んで、新しい人を採用しますよね。それなのに「あ、思ってたのと違う」となると、お互いがっかりするし、残念な気持ちになると思うんです。それがなければ、わたしたちがビジョンとして掲げている「仕事をおもしろく、働くをたのしく」に、ちょっとでも近づけるんじゃないかという気持ちがあるので、いつかは採用というものが、今よりも分かりやすくスムースになるサービスを作りたいなっていうのは、気持ちとしてはありますね。
Tad 時代的には副業の解禁であったり、金沢では「首都圏人材をどう生かすのか」というテーマでディスカッションがあったりしますが、そういうテーマには合致しそうなところですよね。転職の前に一回副業みたいな感覚でインターンシップみたいなものって、ありなんじゃないかなって。
吉村 そうですね。実際に、いわゆる「企業で活躍されている人材」と言われているような方々に、「どうしてそんなにのびのびと、生き生きとお仕事できているんですか?」と聞くと、最初にその会社の課題や、まだうまくできないところを伝えてくれたことに「ああ、この会社って正直な、素直な会社なんだな」と好感が持てて、それがあったから、入社しても違和感が特になかった、ということをおっしゃっていました。そういうことを企業にもお伝えできればいいなと思っています。
原田 わたしが働き始めた頃って、転職するといったらこっそり準備を進めて、前の会社にばれないように転職活動しなきゃ、みたいな感じで、ましてやインターンシップなんかとんでもないという感じだったんですが、今だったら副業の話もありましたが、自分の仕事をしながらもう一つの仕事をして、一方をメインでやりたければそちらに移るということも自由な雰囲気になってきているからこそ、やはり必要になってくるサービスですよね。
Tad 雇用者側からの目線でいうと…っていうのも変なんですが(笑)、やはりいきなり社員に辞められちゃうのって困るけど、グラデーションの期間があってくれたりすると、それはそれで助かるかもしれないなと思ったりもします。あとは、軸足は今いる会社に置いてくれていればうれしいですよね。ほかの経験をしたければ、副業として他社さんで勉強したり、経験を積んだりということはあっても、最終的に帰ってくるのはうちだよね、と。そういうところもあったらいいなと思ったりしますね。
原田 そういうことも社員間で共有できていたら一番いいですよね。社員の方にインタビューをしてみて社内の方が「この人はこんなふうに支えてくれていたんだ」ということを改めて知ったという話もありましたが、そういったものをつないでいくということが『MAKING THE ROAD』でできそうですね。
吉村 ありがとうございます。今、わたしたちは動画のお仕事をたくさんさせていただいているんですが、わたしたちの人数だけではとても撮影・編集っていうのをまかないきれないので、たくさんの方に副業としてお手伝いをしていただいています。そういった方々は、メインの企業で毎日お勤めをされながら、ご自分の空いたお時間で、わたしたちと一緒にお仕事してくださっています。軸となっている会社でたくさんいろんなことを経験して、お勉強されて、我々と一緒に働いてくださるので、わたしたちとしてもすごく勉強になります。「会社でできない経験をここでできている」とか「ここでの仕事があるから会社の仕事も頑張れる」と言ってくださる方もいらっしゃって、お互いにとっていい関係でいられるというのがありがたいことだなと思ってます。
Tad 副業インターンシップ、「WORK QUEST2」をぜひ。
フリーランスや副業人材のメンバーとチームを組み、プロジェクトにあたっている。
吉村 いいですね。副業インターンシップ。副業や兼業って、もしかしたら若い方がされるものだというふうに思われている方も多いかもしれないんですが、いろんなスキルだとか能力を求めていらっしゃる企業はたくさんあると思っているので、年齢も性別もご経歴も幅広く、多くの方がチャレンジされるとおもしろい分野なんだろうなと思います。
Tad 何度も雇用者の目線が出てきますけども(笑)、まだ社員の副業を受け入れることや副業のために社員を送り出すことに企業も慣れてないから、どういう制度設計をしたらいいのかもすごく不安だし、人事部も心配なのかなと思うんですけど、そのあたりは社労士事務所としての立ち位置から、うまくつなげられそうですよね。
吉村 わたしたちと一緒にお仕事をされている方は、今の会社が好きだから会社に軸足を置きながら我々と一緒に仕事をすることで、今の会社をまた好きになっている、という部分もあるんじゃないかなと思っています。ほとんどの方が今の会社を辞めたくて副業をやっているわけではないなっていう印象です。
Tad そうやって経験を積んで、それがまた本業というか、軸足を置いている会社のほうで経験が活かせるような事例が、これから世の中にどんどん出てくると思うんですが、それでも人事部が作る制度としての社内規定っていうのは、それを前提にしたデザインになっていなかったりするところに大きな課題があるのかなと感じます。
吉村 そうですね。
Tad 吉村さんが企画されている中には、副業したい人材向けと、副業を受け入れたり送り出したりする企業にとってどういう制度設計をすればよいかというものがセットになるとと良さそうですね。
吉村 その意見、いただきます。
原田 持っている武器というか、資格などもありますが、やはりそれを全部活かしながら、すべて包括してサポートしてもらえれば、さらに一段上に行けるような感じがありますよね。
吉村 そのアイデア、本当にいただいちゃっていいですか?(笑)
Tad この番組が新しいサービス開発のベースとなってくれたらうれしいです(笑)。
YouTubeチャンネル内の企画「MTR お仕事図鑑」に、Tad Mitani氏もゲスト出演。

ゲストが選んだ今回の一曲

宇多田ヒカル

「One Last Kiss」

「実はエヴァンゲリオンが大好きでして、アニメが好きになったきっかけの作品なんです。わたしが大学生のころからずっと続いていた作品で、ようやく完結したということで、スタッフのみなさん、エヴァンゲリオンの関係者のみなさん、おめでとうございます。ということと、一緒に働く仲間に、『吉村さんには、庵野秀明さんみたいに自分の世界観を信じて作ってほしいです』と言ってもらって、それがすごくうれしかったので、この曲にしました」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『株式会社MAKING THE ROAD』代表取締役の吉村千春さんをお迎えしましたが、いかがでしたか、原田さん。
原田 一つの会社の枠にとらわれないで働くということで、社会に貢献したり極めたりすること。それから雇用する人とされる人がしっかり分かり合っていること。それが吉村さんのおっしゃる「仕事をおもしろく、働くをたのしく」につながっていくんだなということがわかりました。
Tad 今回は何か新しいものが生まれる瞬間をご一緒できたように感じています。インターンシップの転職版である「WORK QUEST」の話からインターンシップの副業版まで発想が膨らみましたが、僕がけしかけるように「やりましょう、やりましょう」っていうやりとりが電波に乗ってみなさんにお届けされてしまいましたので、本業はラジオパーソナリティですが、副業として「WORK QUEST2」の企画にぜひ参加したいと思います(笑)。またアップデートがありましたら番組でもご報告を申し上げます。よろしくお願いします。

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