後編

新たに始めた「執事」事業の取り組み。

第85回放送

株式会社三谷サービスエンジン 代表取締役社長

本村幸宏さん

Profile

もとむら・ゆきひろ/1964年、石川県金沢市生まれ。1983年、石川県立金沢西高等学校卒業。1991年、『三谷石油サービス株式会社(後の『株式会社三谷サービスエンジン』。創業は1963年。石油および車両保険等の販売)』入社。ガソリンスタンドのマネージャーを歴任し、2003年、取締役部長に就任。2008年に専務取締役、2012年より現職。

三谷サービスエンジンWebサイト

インタビュー前編はこちら

Tad 今回のゲストは、前回に引き続き、『株式会社三谷サービスエンジン』代表取締役、本村幸宏さんです。プロフィールによると、1983年に学校を卒業されてから入社されるまで8年間ありますが、この間はいったい何をされていたんですか?
本村 最初は全く違う業界にいました。その次にガソリンスタンドを全国展開する東京本社の会社に入りまして、5年間おりました。その会社が金沢から撤退することがきっかけで、当時の『三谷石油サービス株式会社』にSS(※)をやらないかと声をかけていただいて、入社したというわけです。

※「サービスステーション」の略称。いわゆるガソリンスタンド店が、ガソリン以外も含めた自動車関連サービスを行う拠点として、この呼称で呼ばれることが多い。
原田 全国展開されている会社にいらっしゃった時は『三谷石油サービス株式会社』とすでにお付き合いしていたということでしょうか?
本村 いえ、ほとんどなかったですね。はっきり言って、当時は上から目線で『三谷石油サービス株式会社』のことを見ていました。全国と地方ということで。ある意味、天狗になっていました。
原田 なるほど。今思えば、ということですね。
本村 入社の際に当時の社長(現会長)と面接をしました。「君はこの会社で何がしたいんだ?」と単刀直入に尋ねられました。
Tad 強烈ですね。
本村 「何? この人…」と思いましたけど(笑)。当時、自分は天狗だったので、「三谷を変えます!」と言い放って、今に至ります。
Tad (笑)
原田 その時、きっと当時の社長は、「おっ、やる気があるな」と思ったんでしょうね。
本村 そう思ったのか、どう思われたのかはうかがっていないんですが、骨のあるやつだと思っていただいたのかなと思います。
Tad その後、実際にガソリンスタンド業界全体にいろんな変化があったわけですが、本村さんが会社を変えてきた記憶には、どういうものがありますか?
本村 一番大きかったのが、セルフ解禁です。自由化ですね。平成8年に特石法(特定石油製品輸入暫定措置法)廃止、平成10年にセルフ解禁ですから、そこから本当に淘汰の時代に入りました。その5年後にガソリン販売量のピークを迎えるわけです。前回も話しましたが、6万か所あったSSの数が現在は3万か所を切っている状況ですが、その波をどう乗りきるかを考えるのが大変でした。
Tad ガソリン車の燃費が良くなっていったことも関係していますか?
本村 そうですね。そもそも車に乗る人も減っています。
Tad 3分の1から4分の1くらいになっていますもんね。
本村 そういった時代になり、SSも環境に対応していかなければなりませんでした。変化のスピードが急加速しましたね。
Tad 実際にガソリンを売る量が減っていく中で、どのように対応されたのでしょうか?
本村 ガソリン販売量の減少はここ2,3年という感じで、それまではずっと右肩上がりで伸びていました。お客様に来ていただくためにはどうすべきか考え、そこからお客様に物を買っていただける、そのためのコミュニケーションのサービスを提供していくということに特化していきました。
原田 いろいろ考えていらっしゃった中で試行錯誤があったんじゃないですか?
本村 いろいろなことがありました。北陸のガソリンスタンドは、春夏は灯油の需要がなかったり、タイヤ交換がなかったりして、収益が上がらないんですよね。冬は灯油もありますし、タイヤ交換の作業があって収益的にはすごくいいんですが、春から夏にかけては何も売るものがないので半期は赤字、冬場は黒字でトントンというのが昔ながらのSS業界だったんです。まずはその状況を変えることを考えました。それまでの当たり前を当り前じゃなくするにはどうすればいいのかを考えたんです。
原田 具体的にはどんなことをしてきたのですか?
本村 何も売るものがないという梅雨の時期に、倍の計画でキャンペーンに取り組もうと。
原田 倍?
本村 要は収益を毎年この時期で100万上げるところを200万上げましょう、というようなチャレンジをしました。目標に達するかどうかは置いといて、とりあえずやるんだと、とにかく「気合と根性」、あきらめない気持ちを社員に持たせることによって、企業体質を変えようというところが原点です。このキャンペーンは今年で12年目になりました。
原田 利用者にとっては今年も6月にキャンペーンをやるんだということで認知されているわけですね?
本村 はい。常連のお客様にはすっかり浸透してご協力をいただいており、ありがたいです。こうした取り組みを通じて考え方も変わりましたし、極論ですが、人がちゃんとついてきてくれたことがすべてに繋がったのかなと思います。お客様も人、社員も人です。人と人が繋がってきたことが一番の成功の理由ですし、体制が変わってきた理由かと思います。これに尽きます。
人と人との繋がりを大切に考えて企業体質を変化させてきた『三谷サービスエンジン』。
Tad ガソリンの消費量はこれから先も少しずつ減っていくと思うのですが、ガソリンスタンドとしてのサービスはこうあるべきというところに、『株式会社三谷サービスエンジン』の軸がある気がしますね。
本村 そうですね。そう言っていただけるお客様もかなり多いですし、「他とは違うよね」と言っていただけるお客様も多数いらっしゃいます。
Tad 一方でガソリンの燃費が良くなるということもあるんですが、時代は高齢化社会に入っていきますし、運転する人がそもそも減ってしまうという状況でもありますよね。
原田 免許を返納される方もいらっしゃいますしね。
Tad そういう中でさらに新しい取り組みもなさっているそうですね。
本村 はい。今まで当社を利用してくださったご年配のお客様の中で、「車を手離したからもうガソリンスタンドには行けないよ」という方がここ数年増えていましたので、そのお客様に生涯、当社のお客様でいていただきたいという思いと、当社しかできないサービスはいったい何だろうというところを考えまして、「執事事業」を展開しようと思っています。
原田 コンシェルジュですか?
本村 コンシェルジュ、もしくはバトラーと言いますか、そういったサービスを展開しようということを思いついたんです。「何でも承ります」というところからのスタートで、お客様に「三谷さんだから安心してお任せできるね」という商売ができないかなと発想しました。
これまで培ってきたサービス力を活かした執事業「わたしの執事さん」を開始。
Tad 「何でも」というのは、例えばどんなことですか?
本村 草刈り、水道の水漏れの修理、雪かきなど、すべての困りごとを何でも引き受けますという形で展開しております。
原田 便利屋さんとは違うんですか?
本村 きっちりとアフターケアもして、「三谷さんだから安心して何でも言えるよね」という形でありたいと思っています。例えば草刈りに行った時に、「それではこれで失礼します」と言って帰ってくる前に、ご年配のお客様のお話を少し聞いてあげるとか、そういったちょっと違うサービスや気配りをメインに展開しています。
草刈りの依頼事例。暮らしにまつわる困りごとに応えてくれ、リピート率も高い。
Tad 「執事の〇〇です」と名乗って…?
本村 はい、お客様からは名前で呼んでいただいています。
原田 なるほど。「〇〇さんに来てほしい」と言われることはありますか?
本村 お客様のリピート率は高いですね。
Tad 変わったご要望もあるのでしょうか?
本村 以前、ご年配の方から冷蔵庫を整理してほしいというご依頼がありました。それでお伺いしましたら、冷蔵庫の中に同じような商品がたくさんあるんですよ。話を聞くと、お一人暮らしで毎日スーパーに行くのを日課にしていらっしゃって、まだ冷蔵庫にあることを分かってはいるけどつい買ってきてしまうと。それで冷蔵庫に入れておくと傷んでしまい、でも捨てるに捨てられずにご依頼があったというケースです。
原田 ご年配の方って食べ物を捨てることにすごく罪悪感があるでしょうし、人それぞれのお悩みがあるんでしょうね。
Tad 今の若い世代でも、自分の親御さんが一人で住んでいて、ちょっと面倒を見に行ってほしいんだけど、というようなニーズもあると思います。
原田 これから高齢化社会が進んでいろいろなニーズが増えていくんじゃないでしょうか。
本村 そうですね。高齢化が進むほど一人暮らしの方は増えていきますので何かお役に立てることがあるのではないかと思います。そういった時に、これまで「三谷さんだから安心」と言ってもらえるような商売をしてきたということが信頼になっていますし、これからも伸びる可能性があるのではないかと思っています。
ガソリンスタンド業から執事業まで、お客様との繋がりを大切に考えている。

ゲストが選んだ今回の一曲

DREAMS COME TRUE

「何度でも」

本村:この曲は、サビの部分が本当に好きなんですよね………

――ここで突然、『株式会社三谷サービスエンジン』SS事業部部長・松田さん、SS事業部副部長・下出さんがケーキを手にスタジオに登場――

松田・下出:居ても立ってもいられなくて来ちゃいました! 本日、本村社長の誕生日ということで、これからも頑張ってください! 元気ハツラツで!

原田:素敵なサプライズですね!

(スタジオ笑い)

トークを終えてAfter talk

Tad 今回は前回に引き続き、ゲストに『株式会社三谷サービスエンジン』代表取締役社長、本村幸宏さんをお招きしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。
原田 社員の方が本村さんのお誕生日のお祝いに駆けつけてくださってすごくびっくりしたんですが、こういうところにも本村さんが大切にされている「人との繋がり」を見た気がしました。Mitaniさんはいかがでしたか。
Tad 企業って商品やサービス内容が決まっているようで実は決まっていないんですよね。今回は石油業界のお話でしたが、最後には執事業のお話もうかがいました。ガソリンの消費量が減るから新しい事業をやるということではなく、免許を返納されてもお客様と繋がっていたいからやるんだという思いを聞かせていただきました。最後には思わぬゲストもサプライズで登場されましたが、社長が部下にドッキリを仕掛けられるような楽しい雰囲気の会社なのですね。
原田 それだけの信頼関係が社員さんの間で生まれているということを実感できました。

読むラジオ一覧へ