前編

お客様の信頼に応えるビルメンテナンスを。

第60回放送

クマテクノ株式会社 代表取締役社長

今川精三郎さん

Profile

いまかわ・せいさぶろう/1975年、石川県金沢市生まれ。1994年、高校卒業後、『クマテクノ株式会社』(創業は1991年。金沢市法島町。設備業、ビルメンテナンス業。建物の環境衛生、設備管理、建物設備保全、防災業務など)に入社。主任、課長、部長を経て、2010年、35歳で代表取締役に就任。

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Tad 今回のゲストは『クマテクノ株式会社』代表取締役社長、今川精三郎さんです。初めてお目にかかったときに、ご経歴を含めてすごくおもしろい方だなと思って、出会ったその日にぜひラジオに出てくださいと申し出ました。
原田 即スカウト?
Tad そうなんですよ。今川さん、さっそくお越しいただきましてありがとうございます。さて、『クマテクノ株式会社』はどんな会社で、どんな事業をされてるんでしょうか?
今川 弊社はビル建物の管理、保守、工事、施工で生業をしています。ビルは建てた時から管理・維持が必要で、工事も伴いますので、建物を建てることと解体以外のことは全て面倒を見ましょうということで事業を行っています。
原田 ビルを維持・管理していくためにはいろんなことが必要ですよね。
Tad 電気やエアコンの調子がおかしい、ですとか、水道に問題があるとか、そういう部分も見ていらっしゃるし、建物を含めた周辺の環境、ひび割れとかもありますよね。
今川 お客様が「ここはどうしたらいいのか」とおっしゃるところをすべて請け負っています。
Tad 社員のみなさんが実際にお客様の建物、工場、ビル、マンションなどをご覧になられて、「ここがあまりよくない」と言われたところを保守・保全作業をなさるわけですね。
今川 はい。社員が行って見て、不具合があったところはもちろん提案させていただきます。基本的にはお客様の見えないところで不具合が起きているんです。水が出ない、電気がつかないというのはわかりやすいですが、ちょっとした不具合は普段見えないところにも多いものなので、そういったところに私たちが入って、事前の予防・保全を促したりもしています。
クライアントの困りごとを聞き、クライアントが気づかない不具合を指摘するなど、フレキシブルな対応が同社の強みだ。
Tad お客様自身が気づかないような不備、不具合が日々生まれているということなんですね。たとえばどんなことがありますか?
今川 ビルには必ず機械室のような設備を集約した部屋があるんですが、そういったところってなかなかお客様は入らないので、そこでよく配管が割れていたり、空調機が異音を発していたりといったような不具合が起きていることが多いですね。
原田 ビルの中でも心臓部みたいなところですよね。普段、ビルを使っているだけでは気づかないこともあるんですよね。
今川 壊れた時に初めてお客様が気づくということもあります。
原田 点検すれば壊れそうだというところに気づくことができると?
今川 そういうことですね。
Tad お客様が普段わからないところをご覧になって、ここがもう少ししたら壊れるという部分を指摘されたりもするんですか?
今川 そうですね。
原田 そうなると多岐に亘って、いろんな技術を持った社員の方が必要になりますよね。
今川 はい。当社は社員をまっさらな状態から育てていくということを今までずっとやってきました。資格をどんどん取ってもらって、教育をしながら、現場を回りながら人を育てていきます。一人前になるには早い人で3年、遅いと5年はかかります。
原田 なるほど。最近、若い人って結果をすぐに出したいという傾向にあると思うんですが、そこは「石の上にも三年」と言いますか…
今川 「失敗してなんぼ」です。こちらがフォローできる失敗は幸い、まだ大丈夫。想像を超えるほどの失敗はまだないですし、こちらでフォローできる失敗はいい経験になったなということにしています。もちろん、お客様にはご迷惑がかかっているので、そこはしっかり謝らないといけないですが、それでも価値のある失敗を繰り返して、当社の社員は育っています。
Tad 御社の事業の裾野の広さというのは、最初からそうした形を目指して展開されてきたんですか?
今川 いや、完全に成り行きで来ちゃいました。困りごとをお聞きして、「うちでできるんじゃないか」と思うところを揉んで、「やれそうだね」とどんどん広がっていった、そんな感じです。
Tad それはお客様から、「こんなことはやれないの?」というように聞かれるからやってみようかなと?
今川 そうですね。当然お客様もそうですが、知らない人を自分の懐に入れるということはなかなか難しいと思うんですよね。年に2、3回来たり、毎月来たり、そういう人や会社のほうが信用できると思いますよね。顔見知りになりますし。「どうせなら君のところでできないのか」というような問い合わせは多いですね。
さまざまな現場で経験を積んだプロフェッショナル人材がクライアントの信頼を獲得している。
Tad なるほど。
原田 創業した頃から「いろいろやるよ」というスタンスで?
今川 もともとはコージェネレーション(熱電併給)事業をやりたいということで会社を設立したそうです。
原田 コージェネレーション事業というのは?
今川 一番わかりやすいところで発電機がありますが、創業当時は電気を買うより自家発電した方が安い時代でした。でも、大きなビルになってくると燃料を焚いたら結局6割ぐらい捨てるんです。その6割をどう再生しようかという課題が生まれますが、一番多いのは排気ガスで温水を作って給湯に使うという方法があります。ホテル、ゴルフ場などで一時期多くなっていたみたいですが、これが恐らく伸びるんじゃなかろうかと先代が思って、会社を作ったと聞いております。
原田 そこから始まって、それだけではなく、いろいろ展開するようになっていったんですね。
今川 そこから燃料がどんどん高騰していったんです。原子力発電だと夜間の電気料が安くなります。そう考えると自社で燃料を焚く方がコストがかさむようになり、発電機を止めてしまう企業が増えました。そうするとコージェネレーション事業があんまり伸びなかったんですが、エンジン発電機は結構いろんな応用がきくんですよ。車を想像していただくとわかりやすいですが、車のエンジンって100vも作れて冷房や暖房もできて、いろんな技術の汎用性、応用性があるんです。そんな経緯で設備的な事業にも挑戦しながら、いろんな領域に展開して今に至ります。
Tad 最初の技術者の方々はエンジンを触るようなところから始めたのでしょうか?
今川 そうですね。特殊な「冷温水発生機」という空調機があるんですが、それに特化した技術者もいて、そういう人からいろいろ学びながら進めていきました。僕が入社したときには特化した技術者がいましたね。
Tad 汎用度の高い技術者の方がいたから、いろんな事業領域に展開していけたということですね。
原田 今川さんは18歳で入社されて35歳で代表取締役社長になられますが、どういった経緯だったのでしょうか?
今川 30歳の時、会社自体に世代交代という波が来ていたんです。ちょうどその頃から仕事がものすごくおもしろくなって、結構楽しくやってたんです。それで僕が34歳の時に先代から「この会社をどうしていこうか」という話があり、僕は何も考えずに普通に「経営をしたい、やらせてほしい」と言いまして。そしたら「まあ、いいんじゃないの」って。
原田 そんな感じなんですか?(笑)
今川 「まあ、いいんじゃないの」って。もちろん考えた結果としての答えだと思いますが(笑)。でも当時は数字も何もわからなかったですからね。自分で独立するつもりはなかったので、この会社でやらせてもらえる機会があるならぜひ、といった思いでお願いしました。
「会話をしてものごとを決めていくことを大切にしたい」と笑顔を見せる今川社長。
原田 入社した時にそんなふうになると思っていましたか?
今川 いや、1ミリも思ってなかったです。
Tad 実際に社長に就任されてどうですか? 想像してなかったような苦労というのはやはりありますか?
今川 苦労を先に言えば、やっぱりお金の問題ですよね。お金が回らなくなるサイクルは結構きついですから。そこが一番気を遣うところです。あと、うちは7名だけでやっているので、ひとりのマンパワーに頼るところが大きくて、人が抜けると戦力が削がれてしまうんです。そこが痛い部分ですね。方向性は社員と話をして決めていくのですが、お金と人の問題というのが一番大変だなと思います。
Tad 逆に社長になって初めてわかったおもしろみってありますか?
今川 本当に最近ですが、会社の代表として人と会う、話す、決める、こういったところが代表として感じるおもしろさなんじゃないかなと思います。いずれにせよ、人と話をしてものごとを決めていくことは大事にしないといけない。やり取りや表現の仕方、それ次第で僕っていう人間や会社を否定されると困るので、そういったところに気を遣いながら仕事しています。それが今一番おもしろいところですね。

ゲストが選んだ今回の一曲

赤い鳥

「翼をください」

「小学校の時に初めて聴いてずっと心の中にあったんでしょうね。成長するにつれて、何回聴いても飽きないですし、ずっと透き通るような声、歌詞やメロディが爽快で、疲れた時や、ふとした時に今でも聴きます」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『クマテクノ株式会社』代表取締役社長、今川 精三郎さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。
原田 普段はビルを何気なく利用していますが、今川さんの会社によるメンテナンスなくしてこの当たり前はないんだなっていうのを今回改めて認識いたしました。
Tad 『クマテクノ株式会社』の現在の事業内容は建設業であったり電気関係、消防関係、管工事、機械設備、環境衛生であったりとWebサイトを拝見しても本当に多彩ですが、それはお客様から「こんな仕事はできる?」というふうに聞かれるところからとおっしゃられました。お客様に聞かれるというのはお客様からの信頼があってこそだと思いますし、それに対して「NO」と言わない、できないと言わないのも、実は会社としてはすごいことなんじゃないのかなと思います。何屋さんなのかって聞かれても、「何屋さんでもいいじゃない」と、「お客様の一番近いところにいようよ」という会社のポリシーがとても素敵だなと思いました。

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