後編

地域のポテンシャルを生かし幸福を追求。

第71回放送

フラップグループ 取締役

高 穂栞さん

Profile

こう・まどか/1981年生まれ。金沢市民芸術村、IT企業、デザイン事務所、フリーランスを経て、2010年、1996年創業の人財総合サービス業『株式会社フラップ(現エキスパート・フラップ株式会社)』に入社。グループ会社に『ウイルフラップ株式会社』がある。SDGs研修講師、SDGs企業導入支援コンサルティングのほか、金沢青年会議所のメンバーとして街づくりの活動にも参加している。

エキスパート・フラップWebサイト
フラップグループWebサイト

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Tad 今回のゲストは前回に引き続きまして、『フラップグループ』取締役・高 穂栞さんです。高さんは、最近始められたことがあるそうですね?
つい先日、オンラインゼミというものに入学しました。完全にオンラインで授業を受けて、テキストをこなして、全国の仲間とミーティングするという内容です。もともとリアルで開催されていたそうで、わたしは7期生なのですが、前々期のころから完全にオンラインになったらしく、それなら参加しやすいと思い参加しました。
Tad 普段は研修もされているから、逆に研修を受ける立場というのは久しぶりなんじゃないですか?
いえ、いつもいろんな研修を受けています。研修というと参加者の大半は大人のイメージですが、今入っているオンラインゼミは学生の方もいらっしゃいます。主催している方が大学の先生で、そこのゼミ生が運営に携わっています。
原田 どんな内容ですか?
わたしが入っている科は「幸福イノベーションを起こす」というものなんです。
Tad 「幸福イノベーション」とはなんですか?
今、ソーシャル・イノベーションの事業って結構出てきていますよね。
Tad 社会的な課題を解決するイノベーションということですね?
はい。社会的な課題を解決しつつ「最終的にみんなが幸せになるためのイノベーション事業をみんなで作り上げよう」というのがそのゼミの目的ですね。
Tad 例えばどんなことをされているんですか?
本当にいろんな経歴の方がその中にいて、全国で名の知られる企業の方もたくさんいらっしゃるんですが、皆さんそれぞれに想いを持っていて、自分の持っているスキルやリソースでいかに幸福になれる事業を生み出せるかということを、みんなで探究していくんです。
原田 具体的に今まで実現されてきたことは?
考えている最中なのですが、卒業生の方の例ですと、障がい者を対象としたサービスが生まれたり、ほかの企業とコラボレートして生み出した実績もあります。世界全体を一気に幸せにするというのは一人ではとても難しいことですが、人が集まることでお互いに支援できたり、コラボレーションが生まれたりして。困っている人をちょっとだけでも助けることができて、幸せに変えていく、というようなことを考えています。
Tad 「困っている人を助けることに繋がる仕組み」を生み出していくということでしょうか?
「こんなことがあったらいいのに」ですとか、困っていることだけじゃなく、「これをやるともっと世界がよくなるよ」ですとか、その人のライフスタイルがちょっと良くなるようにですとか。そういうことが幸福だと感じられることだと思うんですね。
「幸福学の第一人者」とも言われる慶應義塾大学の前野(隆司)教授は「非地位財の幸せは長続きする」とおっしゃられています。たとえば、安心して、お互いに認めあえる存在であるとか、安心できる場所に住んでいるとか、健康であるといった幸せは長続きするということなのですが、科学的にデータも出ているそうです。
Tad 地位財は長続きしないということもあるんですね。
はい。リスクが伴うわけです。お金はいつかなくなるかもしれないし、地位も永遠のものではないですよね。
Tad なるほど。そういった考えは会社として、あるいは高さんのこれまでの活動とリンクするところがあるんですか?
そうですね。それに繋がることがSDGsの研修になります。SDGsって「国連の」と頭についているからか、「難しそう」ですとか取っつきにくい印象を持たれることも多いのですが、結局、世界中のみんなが住んでいる地域・文化の違いはあれど、それぞれが幸せになるためのゴールとしてあるんですよね。
様々な研修のなかには、SDGsに関する研修もある。
原田 SDGsに取り組まれたきっかけはなんですか?
金沢青年会議所です。2011年に入会し、今年で11年目になるのですが、SDGsの前身であるMDGsというものがありまして。
Tad 「Millennium Development Goals」ですね。
そうです。それはどちらかというと、途上国の課題を解決していくための目標で、日本での認知度は低いようです。小学校での出前授業の際や、募金ができる自販機をメーカーの方と一緒に設置するなどして、認知拡大するという活動に携わっていました。ですが、MDGsは2015年までと期限が決まっていたんですね。2016年からはSDGs(Sustainable Development Goals)が発効されました。2015年までは途上国の課題解決がテーマだったのですが、次は全世界の誰もが幸せになることを目指す、というものに変わったんです。
Tad 経済成長だけを追求して、環境破壊しながら、それだと先進国にとってもSustainableじゃない、持続性がない、というのが今回のコンセプトですよね。
そうなんです。結局わたしたちが住んでいる社会や経済、住んでいる環境は、全部リンクするんです。新型コロナウイルス感染症の影響で経済活動が止まって、社会活動も不安になって。経済活動が止まったおかげで環境が良くなったという面もあったけれど、わたしたちの生活は不順になった。環境も社会も経済も全部、同時に解決していこうというのがSDGsです。よく知ったうえで「みんな幸せになろうよ」ということです。
Tad SDGsの導入支援というのは、実際はどういうお仕事になるんですか?
まず「SDGsとは」というところから、経営者の方だけではなく、従業員のみなさんに、なるべく多くの方に知っていただくところから始めます。「大丈夫だよ、怖くないよ」というところからです。
原田 たくさん項目があるから「どれから取り組めばいいんだろう」ですとか、いろいろ悩まれる部分もあるかと思います。
最初の「SDGsとは」から、その後に「御社はどのゴール(世界的目標)にリンクしていますか?」と投げかけます。17のゴールがありますから「その中であなたがやっている仕事、会社がやっている仕事はどのゴールにリンクしていますか?」と問いかけて、従業員の方に挙げてもらいます。さらに「それをもっと良くするためには、どうしたらいいですか?」といった問いかけを繰り返します。やはり現場で働いている従業員のみなさんが仕事のことを一番わかっていらっしゃるので、そこから「もっとこうしたら、環境にも優しくなるし、働いている人にとっても良くなるし、楽しく働けるよね」というところに導くお手伝いをさせてもらっています。
Tad 持続可能な社会に向けて我が社ができることをみんなで考える、というわけですね?
そうです。新規事業ということではなく、今やっていることを一旦棚卸してみる、という提案です。
Tad どういうふうにリンクしているかが見えれば、自ずと新規事業になったり、そこから社会性が飛び出してくる。それが導入支援の結果というわけですね。
そうですね。たとえば、商材としてプラスチックのものを使っていたけれど、これからは紙にもっとシフトしていこうとか。そこから「お客様にもっと発信していこう」というふうに従業員のみなさんから自発的に出てくることが狙いです。
原田 それが自分の幸せにも繋がっていくんだよと、そこまで見せて教えていただくわけですね。
Tad そういう意味では、「SDGs」という分かりやすいキーワードが世の中にあるから取り組みやすくはなりましたが、本質的には会社の仕事がどう社会の役に立つかというところを考えていただくということなんですね。
「従業員のみなさんがやっている一つ一つの業務からは全体を把握しづらいかもしれませんが、それらのお仕事が繋がってちゃんと社会の役に立っているんですよ」ということを、伝えるようにしています。
Tad そうですよね。企業活動とは、元をたどれば幸福度をプラスにもっていくためのものでしたよね。それがいつからか「誰かを幸せにして成長している」、そういうものになってきた気がしますね。
顧客企業のSDGsの導入支援にも取り組んでいる。
原田 ここまでいろんな取り組みについてお聞きしましたが、ところで、高さんは最近スポーツ面でもチャレンジされていらっしゃるとうかがいました。
マラソンを始めて1年が経ちました。雪が大変で、この2か月はバッチリさぼっております(笑)
原田 そうすると「金沢マラソン」には出場されるということでしょうか?
出たんですよ。オンラインで。
Tad 「金沢マラソン」のオンライン開催については、山野市長がこの番組でもお話しされていました。初参加の「金沢マラソン」がオンラインだったということですか?
そうなんです。
Tad これは山野市長も喜ばれるのではないかと思います。
42.195㎞を一気に走るのはさすがにしんどいので、一定期間内に42.195㎞まで走った距離を積み上げる形ならできると思って。
原田 励ましあいながらできますよね。
そうです。パーソナルトレーニングの先生と日を合わせて、一緒に記録を積み上げていくのも楽しかったです。
Tad まちづくりも、企業づくりも、人づくりも、まだまだ持続性や幸せ度を高めるといった観点でいろんなことができそうですね。今後チャレンジしていきたいことはありますか?
やれることはなんでもやってみたいですが、まず自分が持っているスキルでどんな仕事を生み出せるかということと、あとは、金沢SDGs(IMAGINE KANAZAWA 2030)という取り組みです。これは金沢市と国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット、金沢青年会議所で立ち上げたものなのですが、持続可能な金沢、みんなが安心して暮らせる金沢を市民、行政も交えて、みんなで対話する場所、考える場所をつくるという取り組みをやっています。
環境もそうですが、例えば金沢の交通インフラや食文化など様々な面から、もっと楽しい金沢になるためにどうしたらいいのか、こんな取り組みがいいよねというふうにいろんな活動をやっておりまして、最近いろんな企画を活発的に実施しているので、これからさらに盛り上げていけたらいいなと思います。

ゲストが選んだ今回の一曲

Gorillaz

「Feel Good Inc.」

「ケーブルテレビのMVが流れているとあるチャンネルで、このムービーにひと目惚れしたんです。『天空の城ラピュタ』にインスパイアされたというアニメーションも曲もかっこいい。ずいぶん前にリリースされた曲ですが、たまに思い出して聴いています」

トークを終えてAfter talk

Tad ゲストに高 穂栞さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん?
原田 高さんは「とりあえずやってみよう」というところがあるんだなと思いました。みんなが幸せになるためには何ができるのかということをいつも考えていらっしゃるのが伝わってきました。Mitaniさんはいかがでしたか?
Tad 前回も「人の役に立ちたい」というふうにおっしゃられて、『フラップグループ』を起業されたお母さまの意思を受け継いでいらっしゃるかどうかを質問させていただいたんですが、高さんご自身は「SDGs」というキーワードを軸にしたイノベーションを通じて、あるいは自社の事業でもある採用・研修を通じて、「地域全体のポテンシャルを生かしながら人々の暮らしを幸福にするために何ができるのか」ということに取り組まれています。そういう意味では、お母さまと同じ血をしっかりと受け継ぎ、より大きなスケールで発揮されているのではないかというふうに思います。これからも『フラップグループ』の取り組みから目が離せないですね。

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