前編
DXで保険が本質的に進化する、ドライブレコーダー付き自動車保険。
第92回放送
三井住友海上火災保険株式会社 金沢支店長
格谷 隆さん
Profile
かくたに・たかし/1967年、大阪府堺市生まれ。神戸商船大学を卒業後、1991年に『三井住友海上火災保険株式会社』(正味収入保険料では国内第1位、世界第9位である『MS&ADインシュアランスグループ』の中核を担う損害保険会社)入社。主に大阪、東京の企業営業、特に輸出入などの国際物流や海外案件、国内運送に関する保険を多く経験。名古屋でリテール企画部長、宮崎支店長を経て、2020年4月より現職。
Tad | 保険のプロフェッショナルの方をお招きしております。今回のゲストは『三井住友海上火災保険株式会社』金沢支店長、格谷 隆さんです。金沢に赴任されて2年目ということで、コロナ禍の中で転勤されて、どうですか? 地元の経営者のみなさんにも会いに行かれるなどされて、精力的に活動されているようにお見うけしますが。 |
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格谷 | やはり金沢に来た当初というのは、なかなかみなさんにご挨拶もできなかったり、わたしの得意とする、というとなんですが、一緒にいろんな会話をさせていただくということがなかなか難しくて、ちょっと苦労しました。 |
Tad | 今回は保険のイノベーションのお話をお聞きしたいんですが、「そういえば、そもそも保険ってどういうものなんだ?」というのを、知識のない我々にちょっとインプットしていただきたいなと思うんですが。 |
格谷 | はい、身近なもので言うと、例えば自動車保険ですね。それから火災保険。こういったものはだいたいみなさん、分かっていただけてるんじゃないかなと思います。そもそも保険の仕組みっていうのはもう何百年も前から、「冒険貸借」と言って、海外の取引とか、船と荷物に保険を掛けるというような、そういう仕組みはあったんですが、日本で近代的な保険が発達したのは明治時代くらいからですね。今はいろんな新しい保険もたくさん出ているという状況ですね。 |
原田 | 一度入ったらそのままにしてしまったり、見直しって言われてもどういうふうに見直したらいいのかなって、けっこう迷いますよね。 |
格谷 | よく「前年通りで」と、「何も事故がないのでそのままでいいです」という考え方がありますよね。それはそれでいいんですが、保険はどんどん進化していまして、新たな機能が加わったりもしています。例えば自動車保険ですと「ドライブレコーダー付き保険」と言いまして、事故があったときに、画像が自動的に衝撃を感知してオペレーターの方に繋がり、事故報告がスムーズなんです。そんな風に進化していますので、「何か新しい特約ないの?」とお訊ねいただいた方が良いかもしれませんね。 |
Tad | やっぱりどんどん進化しているんですね。この番組のCMでドライブレコーダーの保険が紹介されていましたが、これは「ドライブレコーダー付き保険」ということなんですか? |
格谷 | そうです。保険に加入していただいてこれを選んでいただくと、ドライブレコーダーがお客様のお手元に届きます。それを設置して運転していただくと、ドライブレコーダーがいろいろ話しかけてくるんですよ。 |
原田 | あ、そうなんですね!? |
格谷 | 「急ハンドルが多いですよ」とか、天気予報を言ってくれたりとか。通信機能付きなので、見守っていただいてるような感じもあると思います。 |
Tad | 人気の商品なんでしょうか? |
格谷 | そうですね、発売から今まで、ちょうど2年半で24万台売れてますので、かなりヒットしている商品と言えますね。 |
Tad | 機能としては危険運転を察知してくれたり、天気とか交通状況を語ってくれたり、その他にも何かありますか? |
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格谷 | アラート機能と言うんですが、当然、事故が起こるとオペレーターに繋がって、画像も自動的にオペレーターの元に飛ぶんですが、それをAIが判断して、事故状況の図と文章で事故報告ができるので、例えば大きな事故の場合には怪我をしていて正直それどころじゃない、どうしよう、という状況でも、事故報告が自動的に済ませられるというわけです。さらに、仮に大きな事故の場合にはオペレーターの方が「大丈夫ですか?」、「救急車を呼びましょうか?」と呼びかけもしますので、それで人命が助かったという例もあります。 |
Tad | 通知がなされた時点で「これはドライバーのかたが怪我をされているんじゃないか」というのは、オペレーターのかたはもう分かっているんですね? |
格谷 | はい、AIがだいたい事故の状況を判断して、相手が時速何kmで、こっちは時速何km出していたとか、そういうのも全部分かります。 |
原田 | それはドライブレコーダーからオペレーターのかたへ流れてくるわけですか? |
格谷 | ドライブレコーダーとオペレーターが繋がるんですが、繋がったときにはまずは画像で状況が転送されるんですね。オペレーターにそれがもう届いている状態でAIが解析をしながら「大丈夫ですか?」と連絡が来るというわけです。 |
Tad | 事故の瞬間も慌しいと思いますが、その後に保険会社に説明とか証明しなければいけないものがいっぱいあって、ユーザー側からするとやっぱりすごく不安も大きいと思うんですけど。 |
格谷 | そうですね。しかも相手のいる話になりますと、相手も「いや、そっちの信号が赤だった」とか…。 |
原田 | 気が動転してますから、絶対そういう思い違いってありますよね。 |
格谷 | 必ず揉めるんです。事故というのは当然ですが、だいたい揉めます。 |
Tad | なんだか保険の商品のお話を聞いている感じが全然しませんね(笑)。 |
原田 | そうですよね。言ってみれば、まずは事故に遭わないことが大事。それで、いざという時は手厚くいろいろしてくださるということですよね? |
格谷 | そうですね。自動車保険というのは、事故があって経済的な被害、損害が出た時の補填というのが本来の機能なんですが、なるべく事故に遭わないようにアラートを鳴らすとか、場合によっては月間レポートみたいなものを出して、「最近、運転が荒れていますよ」とか「レーンを逆走しましたね?」というのも全部、分かっちゃうんですね。例えば高齢者のかたをお守りするということもできますので、事故もデータ上はちょっと減っているというのはあります。 |
Tad | ドライブレコーダー自体は『MS&AD』で開発されているものなんですか? |
格谷 | これは『JVCケンウッド』にお願いしていまして、当社専用のドライブレコーダーを一緒に開発して作っています。 |
原田 | 映像もかなり鮮明に映るのですか? |
格谷 | そうですね。当社の商品ですと200万画素のフルハイビジョンですので、非常に鮮明にナンバープレートや信号もきっちり、暗闇でも映るような高機能なものを採用してます。 |
Tad | 製品が付いてくる保険ですが、それによって何か保険契約者さんに値段が上乗せされるものなんですか? |
格谷 | こちらは従来のお支払いいただく自動車保険料に毎月850円の加算で、当社がドライブレコーダーをレンタルするという形になりますね。 |
原田 | なるほど! |
格谷 | 通信機能が付いていますので、ユーザー側からすると常に最新の状態にアップデートされているドライブレコーダーが手に入るということで、非常にご好評をいただいております。 |
Tad | 聞けば聞くほど保険商品とは思えない…。 |
原田 | ですよね。そういう意味では、守られているという感じはすごくしますよね。 |
Tad | 何か新しい機能とか、もっとこんなふうに将来を考えていますというようなサービスって、あるんですか? |
格谷 | そうですね、このドライブレコーダーに関して言えば、2022年1月からスタートする新しいサービスでは、360度、事故の瞬間が映ります。加えてバッテリー機能がありますので、駐車中も車を見張ってくれるという機能も付いていまして、場合によっては事故の時はそれを取り外して事故の状況をカメラで撮ったり、そのまま携帯電話としても使えますので、オペレーターと話もできるというわけです。 |
原田 | 携帯電話としても使えるんですか? |
格谷 | 専用オペレーターに繋がるだけの携帯電話なんですけども。 |
原田 | 直通ということですね。 |
格谷 | ほとんどスマホみたいな、そういう機能ですね。 |
原田 | それに繋がればもう安心ですもんね。 |
格谷 | そうですね。やはり気が動転しているときはオペレーターから初期対応のアドバイスを受けるというのが重要かと思いますね。 |
原田 | そうですね。たぶん事故に遭ったらまず「え、どこにかけたらいいんだろう?」って絶対に頭が真っ白になってますから。いつでもスタンバイしてもらってるという安心感がありますよね。 |
Tad | 保険商品にITというかデジタル製品を組み合わせることによって新しい価値を作っていくというのは、御社の最近の流れの中でどんなふうに位置付けられているんですか? |
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格谷 | 「DX valueシリーズ」というネーミングで、今までの保険だけではなく、DXを通じて世の中のたくさんの人に対して、いろんな社会的課題を一つ一つ解決できるような付加価値を付けていこうということを以前から進めています。 |
Tad | 「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」という言葉の略語で、デジタルの力でビジネスそのものを変革させる新しい価値を提供したり、効率化が実現されるだけではなくて新しいビジネスモデルを作ったり、というものですが、これはまさに「保険のDX」ですね。 |
原田 | そうですね。やっぱりAIの存在がすごく大きい部分ですよね? |
格谷 | そうですね。 |
原田 | なかなか人では解析するのが難しいですもんね、こういった事故に関しては。 |
格谷 | 今はもう事故データが飛んでいきますと、それをAIがしっかりと「見える化」して、状況をしっかりと説明できるようなものにしますので。 |
原田 | 文章になって、しかも図にもなるんですよね? |
格谷 | 図にもなります。今までお客様が説明に困ったり、大きな事故の場合だと説明がかなり後になってしまったりしていたのが、これだと早くできますので、解決までのスピードがこれまでとは全然違います。 |
Tad | ストレスも減りますよね。CMを聞いて「ドライブレコーダー付き保険」については知っていましたが、あれも金沢弁で収録していただいて(笑)。 |
格谷 | 当社の社員を出させていただいて(笑)。 |
Tad | CMでは伝わりきらない魅力と言いますか、新しい保険における変革、デジタル変革がまさに起きているんだなということを、すごく実感します。 |
原田 | やっぱり業界全体としてもそういう方向に進んでいるということなんでしょうか? |
格谷 | そうですね。今はまさにそういったサービスの競争になっていますね。 |
Tad | 保険商品そのものだけでなく、その周辺のお客様の利便性を実現したり、課題を解決するような、そういう方向性なんですね。 |
原田 | 変わってきてますね、保険。保険というと、商品を売りに来る方がいらっしゃってやり取りしてっていうイメージでしたが、そこからまた全然違う領域に進んでいるんだなというのを実感しました。 |
格谷 | そうですね、まさに今、変革期ですね。 |
Tad | 北陸、石川、金沢で展開されるにあたって、こういった新しい性質の商品というのはどんな形で力を入れていらっしゃるんでしょうか? |
格谷 | そうですね。まずは代理店さんがいまして、そこでしっかりと説明していただけないと、そういった商品があるのに「前年度通りでいいです」、後から「ドライブレコーダー付き自動車保険があったの、知らなかった」などとならないように、代理店の管理機能において、たくさんいるお客様の中からどういう方にどんな商品をおすすめしたらいいのか、マッチするのかというのもAIでチェックをして、しっかりと紹介できるような仕組みを作っています。 |
ゲストが選んだ今回の一曲
Eric Clapton
「Change The World」
「学生時代からEric Claptonをよく聴いていたんですが、好きな曲がたくさんあって迷っいました。Claptonとしては比較的新しい曲で、1996年に『フェノミナン』という映画がありまして、そのサウンドトラックに収録されていた曲です。グラミー賞を獲った曲で、大好きな曲です」
トークを終えてAfter talk
Tad | 今回はゲストに『三井住友海上火災保険株式会社』金沢支店長、格谷 隆さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。 |
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原田 | ドライブレコーダー付き保険、すごくびっくりすることが多かったです。病気にならないようにするという予防医学というものもありますが、まずは事故に遭わないようにする予防保険と言いますか、そういうような要素もあって、知らないことがたくさんありました。Mitaniさんは、いかがでしたか。 |
Tad | 保険というと事故が起きた後の損に備えるというイメージでしたが、今の観点ですと、事故の予防とか事故が起きた時の対応を充実させるといった、保険そのものだけではない部分もITやAIの力を使って充実させるというふうに、事業の方向性を本質的に変化させているんだなと、そんなふうに思いました。単純に保険会社として保険金の支払いを減らすために打つ手ということではないと思います。本質的に事業が変化していると見た方がよさそうだなといったふうに感じます。CMでも気になっていたドライブレコーダー付き保険のお話を中心にうかがってきましたが、まだまだ保険とイノベーションの話題はたくさんあるそうなので、次回もこの保険とイノベーションという観点を変えずに、お聞きしたいと思います。 |