前編

一人ひとりに自信を与えるマナーコンサルのスペシャリスト。

第104回放送

株式会社北国販社 代表取締役社長

田川ひとみさん

Profile

たがわ・ひとみ/1974年、石川県金沢市生まれ。北陸学院短期大学英文科を卒業後、アメリカに留学。ヤマノ・ビューティカレッジ アメリカロサンゼルス校、GOWOWメイクアップスタジオ ロサンゼルスハリウッドを卒業。1995年、『株式会社ノエビア』に入社し、教育部で活躍。その後、『日本航空株式会社』を経て、父が経営する『株式会社北国販社』(創業は1980年。金沢市入江。事業内容は企業向けの教育事業、コンサルタント、メンタルヘルスハラスメント企業外部カウンセラー、化粧品卸売販売所)に入社。2017年、代表取締役に就任。

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Tad 原田さん、突然ですが、社会人としての身だしなみやマナーの基本的なことって、どうやって学びました?
原田 先輩がこうしたらいいよとアドバイスをくれたり、先輩の見よう見まねで…
Tad みんなそうだったんですが、コロナ禍のいまは学びたい人の隣に教えてくれる先輩がいないわけですよ。
原田 そういえばそうですね。
Tad 企業も、そういった社会人としての基本的なマナーを教えなければならない、でも実務はリモートだったりするから、どうしたらいいか分からなくて困っている…マナーや身だしなみなどの研修の必要性が、すごく高まっている時代です。今回は、そういったいまの時代に求められる研修教育を事業として展開されている『株式会社北国販社』代表取締役社長の田川ひとみさんをお迎えしております。田川さんは、『株式会社北国販社』の2代目でいらっしゃるんですね。
田川 はい、そうなんです。
Tad いまは教育とかコンサルタントといった業務をされていますが、販社と言うからには、もともとは何かを販売されていたんですか?
田川 現行で「ノエビア」という化粧品の卸売販売を行っております。
原田 「ノエビア」。幼いころに見た、かっこいいCMのイメージがあります。
田川 Mitaniさんは見たことがないのではないでしょうか(笑)。
Tad うーん、見たことはないかもしれませんけども(笑)。「ノエビア」っていったら一大ブランドですからね。「ノエビア」の北陸での販売代理店ということですか?
田川 『株式会社ノエビア』が創業されたときに、全国で販売会社をされる方を探していて、父が石川県で最初に手を挙げました。
Tad 北陸での総合代理店的な立ち位置でいらっしゃるということですね。『株式会社北国販社』を経由して、化粧品の販売をされている会社がどのくらいいらっしゃるんですか?
田川 現在5社ございます。
原田 そうなんですね。個人で販売をなさっている方というのは、たくさんいらっしゃるんですか?
田川 看板を持たず個人で扱っていらっしゃる方のほうが実際には多いです。
原田 お父様がそういう仕事をされて、田川さんご自身も「ゆくゆくは自分がこの会社を継いでいくんだ」というのは、わりと早い段階で思っていらっしゃったんですか?
田川 わたしが小学校一年生のときに、父が元の会社を辞めて「ノエビア」の販売会社を今日から始めると言いまして。いまでこそ化粧品のサンプルというのはしっかりしていますが、その当時というのは、サンプル作りから始めるんですね。
原田 ええーっ!
田川 空容器に本品の化粧水などを入れ替えてサンプルを作っていくんです。それを夜な夜な母と一緒にわたしも手伝わされました。家の中で化粧品の仕事が、それこそ家内工業のように、当たり前みたいに生活の一部としてあったので、それこそ中学生の頃から「お前はうちの会社で『ノエビア』を売っていくんだよ」と言われていました。
Tad それもあって、ロサンゼルスに留学されたんですね。美容関係、メイクアップを学ぼうと?
田川 そのときは本当にわたしも従順で、言われた通り、家族の一員として役に立ちたいなという思いがあって、化粧品というジャンルに行くのであれば、まず基礎として美容系のことは身につけなければいけないと思って、進学しました。
原田 そうなんですね。ヤマノ・ビューティカレッジでは、やはり化粧のこと全般やメイクアップの技術などを学んだということですか?
田川 はい。わたしが通ったヤマノ・ビューティカレッジは山野美容専門学校のアメリカ校だったんですが、今はもうないんです。コスメトロジー科という総合美容の科で当時毎日何をしていたかというと、実は髪の毛を切っていたんです。
原田 美容師?
田川 そうなんですよ。この学校はおもしろくて、1600単位を取ると卒業なんですね。がんばった分だけ早く卒業できて、残りは遊んでいてもいい(笑)。
原田 (笑)
田川 それで、一人髪を切ると1単位もらえて、授業もあるんですが、午前に授業があったら午後からずーっとお客さんを取っているという状態で、とにかく髪を切り続けて、チップをいただいて、そのチップで食事をする、みたいな生活をしていました。
原田 すでにお仕事をしているような感じですね。
田川 はい。アメリカってそういうふうに学生の練習のような場にもお客さんが来るんです。完全に一人一人専用のブースがあって、ちゃんと指名もつくんですよ。
原田 すごい! 「田川ひとみさんでお願いします」みたいな?
田川 「ヒトミ、プリーズ」とアナウンスがかかって「呼ばれた!」と。とても楽しい時期でした。
原田 アメリカでの生活は、肌に合いましたか?
田川 発想が自由で、人種や見た目にこだわることなく、どちらかというと一人一人の個性が認められる国だったので、自分にとってはとてものびのびとした環境で、向いていましたね。
原田 日本とはそういうところが違いますよね。
『ヤマノ・ビューティカレッジ アメリカロサンゼルス校』卒業時の写真。山野校長(当時)と一緒に。
田川 10人いれば10人いたなりの美しさがあります。もちろん日本人らしい美しさというものもあって、自分自身もいま髪の毛を染めていませんが、日本人は日本人らしい、東洋人ならではの美しさがあると思うからです。あまり加工せず、「持っている素材を生かす」、そういうことをちゃんと向こうの人は分かっている感じがしますね。だから、別に人と同じじゃなくていい。
Tad なるほど。そうしたご経験は『株式会社北国販社』に帰ってこられてからも役に立っていますか?
田川 役に立っていますね。みんな同じじゃなくていいよということをいつも言っています。自分の一番得意なこと、自分の一番好きな部分を探して、そこを生かしていけばいいから、っていう話をよくしています。
Tad なるほど。現在の事業内容は教育やコンサルタントということなんですが、ここに至るまでにはどういう経緯があったんでしょうか?
田川 アメリカから帰りまして、まず3年間は、それこそ父の後継者として勉強しなければいけないということで『株式会社ノエビア』に入りました。なぜかそのときに教育部というところに配属になったので、そこから毎日のように研修をしました。多いときで1年間で朝昼夜と300回くらいの研修をしていました。そこにはマニュアルがあったんですが、『株式会社北国販社』に帰ってきてからも販売店の方々への支援として、接客や販売をするときのお客様へのカウンセリングについて、教育の面でお手伝いさせていただいて、いまにつながってきました。
Tad なるほど。化粧品って僕はあまり詳しくはないですが、どんなふうに使ったらいいかということをユーザーに伝えなければならないですし、販売員の方にはどんなふうにプレゼンテーションしたらいいかを伝えなければなりませんよね。
田川 化粧品って医薬品と違って、例えば今日つけたから明日シミが消えるというものではないんです。わたしたちがよく言っているのは、「化粧品というのは、未来ではなく、『これを使うとこんなふうに変わることができる』という夢を売るもの。その行きつく先は、自分のやりたいことが自信を持ってできるようになって、きっといい人生になる、そういう『夢を売る』のだ」と。だから、ものとしては化粧品ですが、その化粧品でお客様が使ってきれいになったときには、きれいになった自分に自信を持って、いい人生を歩んでいただける、そういう夢のお手伝いをするのだと。
原田 お客様にもそういうことを分かってもらうためにも、どういうふうにお話をするかというところも大切ですよね。
田川 そうですね。目先のことだけを伝えるのではなく、なぜお客様がきれいになりたいのかとか、これからどうしたいのかというところまで話をして、だったらいまはこの商品がいいんじゃないですかというふうに提案します。新商品だからというのではなく、あくまで長いスパンで見ていただくようにします。弊社のお客様は長い方で二世代、三世代に亘って使ってくださっている方もいらっしゃって、創業以来40年のお客様や代理店さんも多いですね。
原田 一人一人に合った、その人の求めるこれからに寄り添うようなご提案をされるわけですね。
Tad お客様は化粧をしてきれいになることによって、どんなふうになるんですか?
田川 例えば、自分に自信を持つことができて、いままでは婚活もしたことがなかったけれども、そういう場所に行くようになって実は結婚しました、とか。
Tad 人生が変わるんですね。
田川 そうなんですよ。お客様のお役に立つことができて、幸せの一端を担うことができるって、すごくいいことですよね。
原田 男性にはちょっとピンとこない部分がありますか?
Tad 痩せてモテたいくらいです(笑)。
原田 十分じゃないですか(笑)。
Tad 研修や教育として関わるお客様は、やはり企業が多いんでしょうか?
田川 研修事業に関しては一貫して実は企業、法人に限って行っております。ただし例外が一つだけあって、実はいま、企業内マナー講師養成講座というのを2年前から進めておりまして、2期生がちょうど終わったところなんですが、それに関しては、一般の方々でマナー講師として今後独立、起業されたいという方も通っていらっしゃいます。それ以外は完全に法人のみ、対応させていただいております。
Tad 教える内容はやはりマナーが中心ですか?
田川 そうですね、基本的にはマナーですが、最初の頃と変わってきていまして、いまはもう「人にまつわることならなんでも」という感じです。ちょうど昨日は電話応対研修を、先週はハラスメント予防研修、明日は次世代のリーダー研修をするという感じで、さまざまですね。
原田 日替わりのように、いろんなことを手がけいらっしゃるんですね。
人財育成部門である「AQUAマナーコンサル」のセミナー風景。
Tad いまはオンラインで研修されたりも?
田川 オンラインも多いですね。こんな時期なのでどうしても出張もできないですし、人が集まるということもできないので、オンラインは確実に多いですね。
Tad 画面の向こうに講師の方がいて、ロールプレイングみたいなことをされるわけですか?
田川 主にZoomを使ってやるんですが、それはそれですごく集中ができるようです。受講生同士も集中できますし、ロールプレイングもできます。「これから10分間休憩に入ります」と言った瞬間、みんな好きなことをしてますね。これが集合研修でしたら、10分間の休憩なんてちょっと名刺交換して社交的にお話したりするんですが、それがないですから、そこは一番よかったんじゃないかなと思います。ちなみに、みなさんに「休憩時間に何をされてましたか?」って聞くと「洗濯物を干してました」っていうことがあったり。
Tad リラックスして受講できると。
田川 オンラインだと全国に参加者がいらっしゃるので、いままでだったらまったく出会うことがなかった方と一緒に受講できるという良さもあります。
Tad 企業側からはまず「マナーを教えてあげてほしい」というご要望があるのでしょうか?
田川 いくつか講座の日程があって、そこに申し込みをしていただくという形です。
Tad 研修やマナーの講師としての事業と化粧品の販売というのは、会社の両輪として相乗効果があるものですか?
田川 そうですね、わたし自身は研修をメインでさせていただいているんですが、企業様を対象に研修をするとなったときに、わたしは先生ではないので上からの立場で何かを言うっていうのもちょっと嫌だなというのもありまして、だったら自分も会社を持って、他の企業の方と同じように苦労し、同じように実績をあげ、決算をし、ということをしたいなという思いがあります。ですから、化粧品事業はこれからも続けていくつもりです。

ゲストが選んだ今回の一曲

Cyndi Lauper

「Time After Time」

「生まれが金沢市の香林坊なんですが、昔、『香林坊大和』の向かい側の古いビルに、石川県で初めての貸しレコード屋さんができたんです。そこで初めて借りたレコードがこの曲でした」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『株式会社北国販社』代表取締役社長、田川ひとみさんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか。
原田 田川さんが話をしているときに、わたしやTadさんへの目線や笑顔がすごく心地よくて、やっぱりマナーって礼儀作法以前に心なんだろうなっていうのを、なんとなくお話をうかがうなかで感じました。Mitaniさんは、いかがでしたか。
Tad 印象的だったのは、家業でもある化粧品販売は、化粧品という品物を売るのではなくて、夢を買っていただくことだという言葉です。お客様が自分に自信を持てるようになって結婚できたという事例もあると聞いて、「なるほど」と思ったんですが、マナーって守らないといけない煩わしいもの、縛られるものではなくて、マナー研修や教育を通じて、お客様である企業の人材一人一人が自信を持てるようにしてあげることなのかなと思いました。だからいま、化粧品の事業だけでなくて、マナー研修、教育の方に事業展開されているのではというふうに感じました。リモートワーク時代でも、一人でも多くの社会人や新人の方々に自信をつけさせてあげてほしいな、というふうに思います。

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