前編

国内シェアトップクラスの垂直搬送機で物流自動化に貢献。

第108回放送

ホクショー株式会社 代表取締役社長

北村宜大さん

Profile

きたむら・たかひろ/1975年、石川県金沢市生まれ。1999年、近畿大学商経学部経済学科卒業後、実家である『ホクショー株式会社』(創業は1952年。金沢市示野町。物流自動化機器の製造販売およびメンテナンス)に入社。2004年、取締役に就任。常務・専務を経て2013年9月、代表取締役社長に就任。 公式サイト

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Tad 原田さん、ちょっと想像してみてほしいんですが、工場とか物流センターって銀色の筒がたくさん並ぶ上を、箱やいろんな製品がどんどん絶え間なく転がっていくようなイメージってありませんか?
原田 ありますあります! 結構なスピードでね。
Tad あの製品を上のフロアとか下のフロアに持っていくのってどうしたらいいと思います? 上や下の階で、ものづくりとか保管とかしてるかもしれませんよね。
原田 そうですね、誰かが持って上がるとかエレベーターとか…?
Tad え!? 手で持っていこうとしてます?(笑) めちゃくちゃ重いかもしれませんよ。
原田 どうしましょうか…?
Tad 実は、別のフロアに製品を持って行く場合は垂直搬送という仕事が必要になるんです。今回は、垂直搬送機で全国トップシェアを誇る『ホクショー株式会社』の代表取締役社長、北村宜大さんをお迎えしております。北村さん、『ホクショー』ではどんなものを作っているのか、ご説明いただいてもよろしいでしょうか?
北村 一般的にはコンベヤと呼ばれるものなんですが、物流自動化機器の製造販売を生業にしてます。製造業ですと工場、流通業や物流業になりますと物流センター、こういったところでものを運んだり仕分けをしたりするコンベヤ設備を作っている会社です。
原田 なるほど。インターネットでものを注文すると、今は昔と比べてかなり早く届くようになりましたが、そういったことにすごく貢献している設備と言ってよろしいでしょうか?
北村 そうですね。製造から小売りまでの一連の流れをサプライチェーンとよく言いますが、この自動化に貢献するというのが当社の企業使命です。ですから、みなさんがインターネットで買った商品がご自宅に届くこともそうですし、店舗で売っているものの返品処理、つまり売れ残ったものの仕分け処理にも当社の設備を使っていただいております。
Tad 返品されたものも『ホクショー』の機械で仕分けがなされて保管されたり、リサイクルに回ったりするわけですか?
北村 そうです。
原田 なるほど。返品も人の手で一つ一つ分けるんじゃなくて、仕分けをする機械みたいなものがあるっていうことですね?
北村 あります。あまりご存じないと思いますが、返品というのはほとんどのジャンルの商品で存在すると思います。アパレルもそうですし、最近ですとドラッグストアで買う日用雑貨とか、最近は少なくなりましたが書籍、CD、DVD。こういったものすべてに返品処理というものが存在します。
原田 それは、売れなかったものをメーカーに戻すという意味ですか?
北村 はい。書籍だったら出版社別・版元別に仕分けをしたり、アパレルなら商品カテゴリー別、サイズ別、色別といったようにカテゴリーに分けるというものです。
原田 それも自動で分けることができるんですか?
北村 自動で分けます。バーコードや、最近はアパレルで多いですがICタグなんかを仕分けのトリガーにして出荷仕分け、あるいは返品仕分けをしております。
『ホクショー』のバラ物自動仕分けシステム。アパレルや日用品のほか、さまざまな製品の仕分けに対応。
Tad 工場や物流センターで御社の機械をたくさん採用されてると思いますが、今までどのくらいの製品を出荷されているんですか?
北村 当社の主力製品は、垂直搬送コンベヤと仕分けコンベヤになります。垂直搬送コンベヤっていうのは国内外で今まで2万台を超える数をお納めしています。
Tad 2万台!?
原田 すごい…
北村 仕分け機に関しては垂直搬送機より比較的新しい商品なので、納入実績台数としてはまだ少ないですが、それでも国内外で800台を超える数をお納めしております。
原田 垂直搬送っていうのは先ほどMitaniさんがおっしゃっていた、上の階と下の階を行き来するものですか?
北村 そうです。
原田 はー、なるほど。
Tad それも製品によって大小さまざまなサイズがあったり、箱のままだったり、パレットという台に乗った状態だったり、いろんな形に対応されていらっしゃるんですよね。
原田 工場によって運びたいものもサイズも、みんな違いますもんね。
北村 運び方は全然違います。たとえば倉庫の荷物を想像していただくと、フォークリフトでパレットに乗った積載物を運ぶ垂直搬送機もありますし、カゴ台車で運ぶ垂直搬送機もあります。あとは、工場なんかですと製造工程で原料を運んだり、段ボールに梱包された製品を運んだりしますので、運ぶ荷物の寸法や重さ、要求されるスペックっていうのは全部違いますね。
Tad お客様ごとにオーダーメイドしているぐらいのバリエーションがありますよね。
北村 基本的にはすべて受注生産です。建物の条件も運ぶ荷物の条件もお客様によって違いますので。
Tad たしかに。そもそも工場の環境がわからないと、どういう寸法で作ってあげればいいのかがわからないですね。
原田 規格のものじゃダメってことですよね。
北村 1階と2階の階高も建物によって全部違いますし、運ぶ荷物の寸法もお客様によって全部違います。
『ホクショー』の垂直往復搬送機「オートレーター」。多階層における多品種のランダム搬送に対応できる。
Tad それを2万台も! 今では『ホクショー』といえば自動搬送機、物流の自動化といったところで大変有名な会社ですが、創業時はどういう会社だったんですか?
北村 谷本知事もいろんなところでお話しされますが、石川県って製品出荷額の70%から80%を機械産業が占めていると思います。機械系の会社って戦後の創業が多いんですが、当社も1952年に祖父が創業しました。最初はものを作っておらず、農機具ですとか機械工具を販売する商社としてスタートしました。社名ももともと「北」の「商」と書いていまして…
原田 今はカタカナになってますけれども。
北村 元々は漢字だったんです。北陸で一番の商社になると標榜した社名だったらしいです。
Tad 最初はメーカーではなく、商社として仕入れて販売するということをされていたわけですね。それがメーカーに転じるきっかけというのは、何かあったんですか?
北村 もともと石川県はチェーンを作る産業が盛んだったということもあるんです。たとえば、加賀市の会社で当社のコンベヤのチェーンを作ってくれている『株式会社江沼チヱン製作所』、『大同工業株式会社』といった会社があります。モータースポーツが好きな人だとわかると思いますが、『大同工業』のチェーンは「ヤマハ」のオートバイに、『江沼チヱン製作所』のチェーンは「カワサキ」のマシンで使われています。
原田 そうなんですか。
北村 こうして以前からチェーンの製造が盛んだったので、石川県で機械産業が主要産業になったと思われます。まず、そんなふうに近隣で部品となるチェーンが盛んに作られていたという状況がありました。さらに、石川県は米どころでもあったので、当社は農機具、それから機械工具を販売する商社としてスタートして、それらを農家に納めていたわけです。農家の人って、昔は米俵を肩に担いで運んでいたんですよ。一俵って60キロもあるんです。
原田 そんなに重いんですね。
北村 それを運ぶっていうのはものすごい重労働だったんです。それを見た当社の創業社長…祖父ですが、なんとかして農家の人を楽にしてあげたい、何か貢献できることはないかということで、米俵を運ぶコンベヤを作ったのが最初です。
Tad 当時はそういう製品はなかったんですね。まさにお困りの方が目の前にいらっしゃって、商社だったけれども、製品がないならメーカーとして作ろうっていうのがきっかけなんですね。
原田 そのために設備を整えるところから?
北村 はい。最初は商社だったので工場はいらなかったんですが、途中からものを作るようになって、今の金沢市示野町に移ってメーカーになってから工場を作りました。
Tad そこから垂直搬送機で全国トップシェアまで上り詰めるというのはけっこう大変な道のりだったと思うんですが、どんなふうにたくさんのお客様を獲得できるようになっていったんでしょうか?
北村 最初に作った米俵を上げるコンベヤというのは、ものを斜めに運ぶものなんですね。今はもうそれは作ってないんですが。
原田 斜めに?
北村 スラットコンベヤというものでして、ウッドスラット、つまり木の板がグルグル回って一定ピッチで鉄のアタッチが付いていて、このアタッチで米俵を引っ掛けて斜めに上げるコンベアなんです。これだと、たとえばエスカレーターとエレベーターを想像していただくと、平面的な寸法で見ると当然、エスカレーターよりエレベーターの方が小さいですよね。つまりエレベーターの方が、スペース効率がいい。それに、日本の建物も倉庫も工場も、どんどん多層階になっていきましたよね。でも、エスカレーターって1階から2階までしか運べない。3階まで運ぶときは1階から2階、2階から3階のエスカレーターを経由しなければいけない。一方で、エレベーターは1階から2階にも3階にも、1度で運べますよね。垂直搬送機も同じ仕組みで、どんどん多層階化していく日本の建物に対応して作っていったのが最初なんです。お客様はありとあらゆる業種に亘ります。みなさんがもし見たことがあるとしたら料理旅館の配膳・下膳、『よみうりランド』の急流すべりのボートを上に運ぶものなんかもそうです。ありとあらゆる業界のいろんなお客様から「こんなことはできないか?」、「こんなものを運べないか?」というニーズがあって、それに挑戦していったのが、2万台を超える今までの納入実績になったんじゃないかなと思います。
Tad なるほど。今のお話を聞くだけで本当にいろんな場所で使われているようですが、先ほどもほとんど受注生産だとおっしゃられていましたよね。ということは、現地で設置をして、カスタマイズと言いますか現地の環境に合わせた調整をされたりもしてるんですよね?
北村 当社の場合は、石川県の工場出荷段階のものが完成品ではないんです。お客様の工場だったり、物流センターに運んで、必ず据え付け工事というのが発生します。実際にお引渡しをして使っていただいた後も、長いお客様ですと20年から30年も使うお客様もいらっしゃいますので、その時に荷物が変わったりすると当然改造も必要になってきますし、長く使っていただく上で点検・保守などのサービスが必要になってきます。
Tad 流すものが変わってくるとまたちょっと調整しなおすということになりますもんね。
北村 はい。ですから、すでにコンベヤを納めたお客様で、増設や改造をするという案件もありますね。
Tad 今では全国どこでもスタッフの方が行ける体制になっているということですよね?
北村 そうです。全部当社の社員というわけでもないんですが、パートナー企業や据え付けの協力会社、アフターサービスの協力会社は日本全国にございます。
Tad 販売網と同様にメンテナンスや調整のため、据え付けのための協力会社が全国にあると。
北村 販売よりもむしろ据え付けやアフターサービスが大事ですね。特にアフターサービスなんて本当に待ったなしです。機械が壊れた時に「すぐに直しに来てください」と、そういうニーズなんですよね。ですから、各エリアごとに協力会社がいないと当然サービスができないですし、拠点がないところにはコンベヤをお納めすることもできないということです。
原田 メンテナンスができないっていうのは絶対にありえないということなんですね。
Tad 海外の日本企業や、あるいは外国の企業のものづくりの現場にも製品をお届けする機会はあるんですか?
北村 海外の現地法人として社員がいるのは韓国のソウルと中国の上海だけですね。それ以外はASEANが多いんですが、ベトナム、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾です。こういった国には当社の製品を販売するだけでなく、据え付け、アフターサービスをしてくれる協力会社もあります。そういったところじゃないと輸出も含めて、コンベヤをお納めすることはできません。そういう商品なんです。

ゲストが選んだ今回の一曲

クイーン

「ボヘミアン・ラプソディ」

「普段、あんまり音楽を聴かないんですが、何年か前にクイーンのフレディ・マーキュリーが主人公の『ボヘミアン・ラプソディ』という映画がありました。日本で公開される前に国際線で観たのが印象的です。また、生まれが昭和50年、1975年なんですが、クイーンが初来日した年ということで、この曲を選ばせていただきました」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『ホクショー株式会社』代表取締役社長、北村宜大さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。
原田 コンベヤを作る原点というのが、重い米俵を肩に担いでいる農家の方を助けたいという思いだったというお話が印象的でした。それが今もそれぞれのお客様のニーズに細かく応えていきたいという企業の姿勢につながっているのかなと感じました。Mitaniさんはいかがでしたか。
Tad 最初は農機具の商社だったのが、農家さんが重たい米俵を運んでいるのを見て何とかしてあげたいと思ったのがメーカーとしての原点だったというのは、僕もグッとくるものがありました。事業拡大の過程で「こんなものを運べないか」というお悩みやお題をいただいて、それにひとつひとつチャレンジしていった積み重ねだとおっしゃっていましたが、ないものを作ってこられた『ホクショー』が、次の時代に向けて何を作ろうとしているのか、次回じっくりうかがいたいと思います。

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