後編

オンライン営業活動の課題を乗り越える。

第107回放送放送

野村證券株式会社 金沢支店長

西丸 禎文さん

Profile

さいまる・よしふみ/1969年、福島県福島市生まれ。神奈川大学経済学部を卒業後、1992年、『野村證券株式会社』(創業は1925年。金沢支店は1926年に全国6番目の出張所として開設)に入社。最初の配属先は梅田支店、後に高崎、神戸、鹿児島、松山勤務を経て、2012年、岡崎支店長に就任。本店勤務を経て2020年、金沢支店長に就任。

Tad 今回のゲストは、前回に引き続き『野村證券株式会社』金沢支店長、西丸 禎文さんです。前回は『野村證券』の強みでもある対面営業を会社としてもすごく重視されているというお話をうかがいました。お客様の信頼を結果的にいただけているということですが、そうは言ってもコロナ禍ですから、なかなか従来の対面営業というのは難しいのではないか、とも思います。今は実際にはどんなふうにされているんでしょうか?
西丸 お客様のところにこちらの意志だけで自由にお邪魔するということは難しいので、そういった際には当然ですがお客様のご了解を取った上でお伺いします。あるいはウェブを使いながらお話をさせていただきます。最近はITツールを使いこなす方が多いので、メールのアドレスさえ教えていただければウェブで会話をする、対面するということが最近は増えてきています。
Tad 今までですと何気なく部屋の中にある美術品を見て、「お好きなんですか?」と話が弾むようなこともあったかと思いますが、オンライン会議だとどうやってパーソナリティを知っていくんでしょうか?
西丸 オンライン会議の場合ではどうしても用件のみとなります。お客様のご了解を頂きお邪魔させていただいたとしても時間は限られます。今まででしたら1時間以上かかってしまうこともありましたが、やはりコロナ禍ですので30分や15分の時もあり、非常に短くなっているように思います。ただその分、集中したり工夫したりしますから、短期間ではありますが時間を効率的に使えているんじゃないかなと思います。
Tad オンラインでは、趣味や好きなことのお話、家族のお話をすることは難しいのでしょうか?
西丸 最初からいきなり、というのはやはり難しいと思いますが、二度、三度と顔を合わせているうちに、気心が知れてきて話しやすくなることがあります。
原田 なるほど。何世代にわたってのお客様もいらっしゃるということですから、「ご両親はお元気ですか?」といったようなお話もでてきますよね。
西丸 そうですね。営業といっても、仕事だけじゃない会話も多いです。逆に言うと、言い過ぎかもしれませんが、そちらのほうが大事なのかもしれませんね。仕事だけになってしまいますと、せっかくのお客様の情報を台無しにしてしまうことになるので。お客様の趣味の話だとかご家族の話、お客様の生まれたときの状況の話のほうが、どちらかといえば関係をほぐしてくれますね。
原田 そんなことまで聞かれるんですね!
西丸 そういう雑談のほうが、仲良くなれる機会が多いかなと思います。
Tad 生まれた時の話というのは、どんなお話をされるんですか?
西丸 例えば戦後日本の復興時代の経済の話をすることがあります。
原田 なるほど!
西丸 お客様が「小さい頃の金沢の街というのは今とは全然違ってこんなのがあったよ」ですとか、わたしのように県外から来た人間からは想像もつかないような金沢の話ですとか…そういった貴重なお話を聞かせていただいたりしています。
Tad なるほど。
原田 それを聞き出す話術、聞く姿勢というものは、どういったところから学ぶのですか?
西丸 これは本当に永遠のテーマでありまして、セールスパートナーはついつい自分からしゃべろうとしてしまいがちなんですよね。そうするとせっかくお客様の話をする機会を遮断することになってしまうので、どちらかというとこちらがしゃべる、ネタを探すというより、引き出す、つまり拝聴力といいますか、ヒアリング力をつけるほうが大事なんじゃないかと思うんです。わたしもお客様のところにお邪魔するときは極力しゃべらないように…今日はちょっとしゃべらせていただいておりますが(笑)だいたい8割から9割くらいはお客様に語っていただいて、わたしが話すことは1割あるかないか。そうすると最後にお客様から、「支店長、今日は良い話が聞けたよ」なんて言われたりしますけれど、実際には「全然しゃべっていないのになあ」と思うことが結構あります。
原田 それだけ親身になって聞いてくださるという姿勢が信頼感に繋がるということでしょうか?
西丸 人はしゃべることの方が好きなので、そこはわきまえながら会話した方がいいな、と思います。
Tad 個人・法人のお客様向けに株式だとか投資信託、債権、遺言信託、M&Aなど本当に多岐にわたる商品を展開されているということでしたが、人間力の他にも、それぞれ個別の能力・知識・スキルというものがすごく大事なのかなと思います。そのあたりはどうされているのですか?
西丸 業務内容が一人で全部こなせれば百人力なのですが、それはなかなかできませんので、やはり支店の中でもチームを分けているんです。法人様であれば法人様のニーズ、あるいは個人様であれば個人様のニーズがありますが、すべてが一緒ではありません。年齢や家族構成によっては、それぞれのニーズがバラバラですから、それに合ったような社内での組織づくり、チームづくりがございまして、そのチームごとに求められるスキルを高めて勉強したり、資格を取ったりしながらお客様の対応をしていくということを今やっております。
株式・債券・投信だけでなく、お客様の考えに合わせた対応をしている。
Tad それぞれのプロがそれぞれのお仕事ごとにいるというようなイメージなのでしょうか?
西丸 そうですね。
原田 時代に応じてどんどん変えていかなきゃいけない、アップデートしていかなきゃいけないですよね。
西丸 本当にそうですね。我々は新しいツールを用いることが当然あるのですが、もちろん金融工学的な考え方、運用の仕方というものはありますが、そうではなくて、やっぱり人としてどうやって変化していくかというところは本当にイノベーティブですし、コロナ禍という予想していなかった状況の中でのお客様の対応というものも、本当に変わっていかないといけない。そこはまさにその最中で金沢に来させていただいているわけなので、一生懸命頑張らなきゃなというふうに思っているのですけどね。
Tad 逆にコロナ禍だからできたこともあるのでしょうか?
西丸 人間対人間だと正面玄関があり、守衛さんや門番さん、番頭さんがいたりします。今まではそこでシャットアウトされていたりしましたが、Webですと直接そのお目当てとしているお客様のところにメールから入っていける。これってやっぱり今のこのコロナ禍の特徴というか、いろいろなITツールを皆さんが使いこなしている時代だからこそだと思うんですよね。変わってきたなというふうに思いますよね。
原田 Webを通じて新たに発信されていることもあるのでしょうか?
西丸 たくさん種類がございまして、例えば当社は、北は北海道から南は沖縄・九州まで120カ店あるわけですから、せっかくわたしが金沢にいて、こんなに素晴らしい金沢の企業がたくさんあるわけなので、その企業を紹介するためにWebを使いながらセミナーを展開して、全国のお客様に金沢の良さや企業を知っていただくとか、金沢の商品や文化、歴史を知ってもらうこともセミナーを通じてやったりもしています。
Tad 『野村證券』に口座を持つお客様を中心に、金沢のどんなことを紹介していらっしゃるのですか?
西丸 具体的に申し上げますと、金沢の老舗の酒屋さんにご登壇いただきながら、金沢の歴史、あるいは商品、そして、どのようにして商品を作られるのかということを全国のお客様に発信すると、その会社や金沢に興味を持つお客様もたくさんいらっしゃるんです。セミナーを通じた反響もございまして、「ぜひ金沢に行ってみたい」とか、「商品に興味を持った」とか、全国津々浦々からそういう声を聞いたりすると、金沢のためにITツールを活用しながら魅力を広めていくというのは本当に大事なことで意味のあることだなと思います。これはもっともっとやっていきたいなと思っています。
Tad 金沢の企業のお客様でもいらっしゃったり、あるいは経営者の方が直接的にお客様だったりするのかもしれませんが、全国の方に今だからこそ金沢に行きたいという思いを持ってもらうということが巡り巡ってすごく良い循環を生んでいるのかなと思いました。
原田 今、支店として大切にしていることはありますか?
西丸 「我々自身が商品」だと考えています。働いているメンバーは支店に65名ほどいますが、20代から50代までのメンバーでいろいろと仕事をしていくうちにコミュニケーションというものをとても大事にしていきたいなというような思いもあり、「明るく健康的にコミュニケーションを大切にする」というのが金沢支店のモットーです。
原田 なるほど。支店長としては本当に社員一人一人をまずは大切になさっているということですね。
西丸 社員を大切に、社員自身が幸せにならないと、当然、お客様を幸せにするというとおこがましいですが、そんなことはできないなというふうに思います。
Tad 今後は金沢支店をどんなふうにしていきたいですか?
西丸 月並みな言い方かもしれませんが、どのようなお客様にも気軽にご相談いただけるよう、お声をかけていただきやすいよう、おこがましいですが地域で信頼される金融機関になって、何かあったら「野村に行って聞いてきたらいいよ」と言われるような支店にしたいと思っています。
野村証券金沢支店の店頭の様子と西丸さん。

ゲストが選んだ今回の一曲

Official髭男dism

「Pretender」

「コロナ禍に入ったばかりの頃に単身赴任で金沢に来て、全国的には今では普通になっていますが、当時初めてテレワークというものを強いられました。来て間もないですし皆さんはマスクをしていますので、社員の顔ももろくに覚えていない状態で、いきなりのテレワークでしたので、当時は一人で悶々としていました。この曲を聴きますと、その時の不安な気持ちと、逆にこれから金沢で頑張っていくんだという期待が入り混じった複雑な感情が蘇ってくるんです。コロナ禍の中での原点のような曲です」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回は前回に引き続き、ゲストに『野村證券』金沢支店長、西丸 禎文さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか?
原田 2020年の4月に金沢にいらっしゃったばかりということですが、このコロナ禍で、オンラインで金沢の魅力を発信するセミナーを西丸さんは企画されたということでした。それぞれのお客様だけでなく金沢という土地のことも想っていてくださっているのだなあと、すごくうれしく感じました。
Tad ありがたいですね。イノベーションというのは必ずしもテクノロジーみたいな話だけではなくて、「時代の変化に合わせて一人一人が変化していけることだ」というようなこともおっしゃっていましたが、その中で今の金沢の企業文化をお客様に向けて知っていただくセミナーなんてすごくおもしろいと思います。Webでの対面営業が中心になってきて、お客様の趣味や家族構成だとかを探るところからお客様の人物像を知るということがすごく難しくなっています。でも、「こういうオンラインイベントがあるんですけれども」とご紹介するだけでも話題が膨らむきっかけにもなっていて、「次はどんなふうにお話してみようかな」と考える。全国の営業マンにしてみればものすごく助けられている、やりやすくなっているように思います。こういう観点でも実はものすごく大きなイノベーションなのではないかなと思いました。

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