後編

ご縁を繋いでいく、企業としての自然な姿勢。

第16回放送

北陸ミサワホーム株式会社 代表取締役社長

林 諭髙さん

Profile

はやし・ゆたか/1970年、石川県金沢市生まれ。1994年、愛知学院大学卒業後、『株式会社オーシャン』に入社。アメリカ・シアトルで輸入建材業に従事し、1996年に帰国後、同社にて輸入住宅販売を担う。2002年、『北陸ミサワホーム株式会社』(1968年創業。一般建築住宅の設計、施工、販売を手掛ける)に入社。総務部長、専務を経て、2010年より現職。趣味はドライブ、釣り。
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Tad 今回のゲストは前回に引き続きまして『北陸ミサワホーム株式会社』代表取締役社長、林 諭高さんです。林さん、プロフィールを見て改めて気づきましたが、今月(2020年1月)で社長になられて10年になるんですね。
自分でも「そういえば2010年だったな」という感じです。果たして人間的成長はできているのかと…感慨深いですね。まだまだ勉強中です。
Tad 前回も人と人とのご縁を繋いで、結果的に商売にというようなお話をされましたが、会社のこれまでの経緯もさることながら、『北陸ミサワホーム株式会社』としてや『アイ・フィットグループ』(『北陸ミサワホーム株式会社』の関連企業連合体)のほうで取り組まれていることもいろいろとあると思うんですが、最近のチャレンジというと、どういったことになりますでしょうか?
そうですね。『アイ・フィットグループ』は衣食住の「住」をすべて網羅しようということで、『北陸ミサワホーム株式会社』が最初に創業し、グループの中では兄貴分になるわけですが、このグループによっていろんなご縁がたくさん出てきました。前回もお話しましたとおり、当社が手掛けた住宅にお住まいの17,900人のオーナー様とのご縁を、せっかく北陸で一番多くのご縁を持たせていただいておりますので、さらにもっともっと繋いでいきたいということで、元々は住んでいらっしゃる方からのお願いでもあったんですが、婚活事業を始めてみようかと思っています。特にオーナー様のご子息を対象にやってみようということで、さっそく来月(2020年2月)に企画しております。
原田 それはニーズがあって、ということですか?
はい。全社員がオーナー様のお宅に年2回お邪魔しているんです。「その後、どうですか? お家で困っていることはないですか?」と。もちろん築1、2年のお宅もあれば、築52年のお宅もあります、そんな中で築20年、30年、40年ぐらいのお宅の親御さんにとって一番のお悩みというのが「うちの息子が、なかなかお嫁さんとのご縁がないんだわ」というお話だったりするわけです。お嬢様の場合も同様に。
最初は冗談のつもりでお聞かせいただいているのかと思って「わかりました」と言っていたんですが、毎回、私だけじゃなくて社員みんながそういう話を聞いてくるようになりました。年々、オーナー様の年齢も上がっていますから、皆さんのお悩みがそこにあることも理解できます。「それなら、何かしようか」と、ずいぶん前から言っていたんですが、ようやく今年やってみようということになりました。反省することも出てくると思いますが、とにかくチャレンジしてみようと。
今回の婚活事業・パーティのことを、オーナー様にしてみれば「家族の婚活」になりますから「ファミリー婚活」、略して「ファミ婚」と名付けました。オーナー様ももちろんですが、関係企業含めまして、同じように悩んでいらっしゃる方、ご縁を求めている方を募集して、いわゆる「縁づくり」をして幸せになってもらえれば、結果として当社の企業理念の「喜んでいただける」というところに繋がるかと思いますので、やってみようと。
Tad 意外な新事業ですね。
原田 『北陸ミサワホーム株式会社』は「家の企業」というイメージで、そこから「婚活パーティ」…「えっ?」と一瞬思いますが、今お話をお聞きしたら納得できます。やはり「ホーム」、つまり家・拠り所といったところは愛をもって成り立っているものですし、ご縁があってのものと考えれば、自然な流れのような気がしてきました。
今「ホーム」とおっしゃいましたが、「ホーム」とは、“建物”そのものの意味もありますが、“家庭”という意味もあります。歴史のある住宅メーカーは「ハウス」と付く会社が多いのですが、「ハウス」とは“建物”のものを指します。「単に箱・もの・建物だけじゃなくて、家庭をつくろう」と言ってますが、「ホーム」だと「ホームシック」とか「ホームタウン」といったように心の内面の要素も意味に含まれるので「我々の仕事は単に箱作りではなく、家庭づくりなんだ」、「幸せな家族をつくることが仕事なんだ」ということで、今の社名になったというふうには聞いています。
Tad 「ファミ婚」って、ちょっといいネーミングですよね。
これは長年、当社の企画を担当している会社の方が提案してくださって、これはピッタリだということで、何通りかあったんですが「ファミ婚」を選ばせていただきました。
Tad 安直に「婚活でカップルが成立すれば住宅市場が増える」ということだと思ったんですが、オーナー様のお悩みが起点になっているとは…私が浅はかでした。
とんでもないです。もちろん、いわゆるお客様を「探す」、「探客」という言葉もありますし、お客様を「創る」、「創客」ということにも繋がるかもしれませんが、目的はやっぱり住んでいらっしゃる方の「お悩み解決」であり、喜んでいただこうということ。人口が少なくなればなるほど我々の仕事は細くなっていきますから、もちろんそういう狙いもありますが、結果として家庭を持たれて、お子さんも生まれて人口が増えれば、これに越したことはありません。いいとこ取りで「四方良し」ということで「ファミ婚」をやっていこうと、若い連中は燃え上がってやっています。
Tad 一方で、海外事業も展開されているとのことですが?
海外のほうは元々、ちょうどこの1月(2020年)で25年になるんですが、ベトナムのほうで教育支援をさせていただいております。グループのなかに『北陸ベトナム友好協会』がありまして、これまで25年に亘り、里親里子制度というボランティア制度に携わってきました。日本人の有志の方にいわゆる「あしながおじさん」になっていただいて、ベトナムのお子さんに教育支援をしていただくというものです。その橋渡しをずっと25年間やってきたというのが正式な言い方なんですが、その間にもいろんなことが始まりました。約10年前からですが、ベトナムに建築の技術を伝えられないかということで、ベトナムで『アイ・フィットホーム』という名前でリフォーム事業をやっています。また、ベトナムの里子の卒業生たちからベトナムの文化を日本で広げてもらえればと、お土産で一番人気があるというベトナムのコーヒーを直接輸入して、こちらで少し販売してみようということになりました。これもなかなか評判が良くて、ネット等でリピーターも出てきているくらいです。これも5、6年ほど経っていますかね。
奨学金の授与など、ベトナムの子どもたちへの教育支援にも熱心に取り組んでいる。
Tad 私もパン屋さんなどで見かけたことがあります。
原田 「ダラットコーヒー」ですね?
そうです。コーヒー豆はやはり高地で栽培されたものが一番おいしいと言われまして、一日の温度差の大きいところに良い豆が育つそうです。ベトナムのダラット地方という高地でおいしいコーヒー豆が生産されているということで、そこから直輸入してやらせていただいております。
ベトナムのダラット高原産の良質なコーヒー豆を使った「ダラットコーヒー」を直輸入し、その販売も手掛けている。
Tad 教育支援の事業というのは、最初はどんなふうに始まったんですか?
当社の創業者がたまたまベトナム旅行に行ったところ、まだ25年前のベトナムですから当時は道も悪く、学校に通えたとしても5キロ、6キロどころじゃないくらいの距離を歩かなければならず、こういう場所にも中学校が必要になるなと実感したそうです。また、ベトナム戦争の後ですから父親が戦災でいない子供たちも多く、彼らに何か教育の支援ができないかというところからこの事業が始まったと聞いております。
Tad ベトナムではリフォームの事業もされているということですが、これはベトナム現地の住宅やお店に対応されているということですか?
そうですね。リフォーム系の仕事をメインでやっておりまして、住宅のほか、多いのはやはり商業建築のリフォームで、レストラン、事務所、ありがたいことに石川県のとある企業の事務所も担当させていただいております。そういうことにも縁が及んで、非常にありがたいのですが、縁の中から派生する事業に発展しつつあります。
原田 そこでは、ベトナムの方も働いてらっしゃるんですよね。
そうですね。ベトナム人が大体8人ぐらいで、日本人が2人です。
Tad 雇用という意味でもベトナムにとってありがたいことですね。
そうとも言えますね。もっと発展して、従業員の数も増えていくんじゃないかなと思っています。
原田 北陸とベトナムの気候は全く違いますよね。そういう中での家づくりやリフォームに関しては、どんな工夫が必要なのでしょうか?
まだまだベトナムの建築技術は遅れているんですよね。それこそ地震なんかは、ホーチミンではほぼないんです。ですから非常に建物が貧弱ですし、おっしゃる通り暑い街なので、穴の開いたレンガを組み立てるというのが向こうの建て方のトレンドです。ただ、だんだん富裕層が増えてきてしっかりとした鉄骨のコンクリートの建物が増えていますし、これからの住まい方も変わっていくでしょう。段々とエアコンのない家もないくらいになってきています。今はバイクが一般的な移動手段ですが、そのうち車に成り代わってくるでしょうから、そうなれば家の車庫も変わってきます。30年、40年前の日本が今のホーチミンでありベトナムなんだと思います。
グループ会社の『アイ・フィットホーム』では、ベトナムで住宅や店舗、オフィスなどのリフォームを中心に事業を行う。
原田 住宅はこれから、というところですよね。
Tad これからだからこそ、これからの産業に今、参入されていて、国の発展と共に事業も成長していける、そういうタイミングということですね。
それこそ先輩たちが52年前に創業して今日ある会社ですから、その形跡、歴史をいろいろと振り返っています。これからベトナムで何かをやっていこうというときにこれが非常に勉強になるんじゃないかなと、ベトナムの責任者ともそういう話をしています。
Tad 言われてみれば、日本の家づくりも、元々全然違うものだったのが『北陸ミサワホーム株式会社』で採用されているようなパネル工法のような近代的な家づくりに変わってきているわけですから。ベトナムもこれから変わっていくと思うと、それはすごくチャンスがあるんでしょうね。
あると思います。特に設備が変わるし、通信手段はもう完全に世界中で変わってきていますし、今からの住まい方もまた全然違う形になるでしょう。しかし、とにかく建物という中で「幸せを創っていく」というのはどこに行っても変わらないと思いますから、その手段をどういう形にするか、どういう建て方にするかというのが、これからベトナムでは非常に大きな課題になるだろうなと思います。

ゲストが選んだ今回の一曲

坂本九

「見上げてごらん夜の星を」

「あまり得意ではないカラオケですが、絶対歌えと言われることも多くて、なるべく短く、簡潔に終わる歌を探そうということで見つけた曲です。坂本九さんの歌はけっこう明るくて、簡潔。この曲のメロディも非常にいいし、詞もいいので大好きで、一生懸命覚えて歌えるようになりました。今でもよく聴いています」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『北陸ミサワホーム株式会社』代表取締役社長、林 諭高さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。
原田 林さんの姿勢として、人と会って、その人の話に耳を傾けて、相手の幸せを考える。それが信頼関係を生んで、ひいてはお仕事にも繋がるという、ご縁の流れをすごく感じました。Mitaniさんは何か学び、感じることってありましたか?
Tad 今回は『北陸ミサワホーム株式会社』の社長としてお話をうかがったわけですが、例えば婚活事業、ベトナムでの教育支援、ベトナムでのリフォームとか、社名からは一見、関係が遠そうな事業でも、いただいたご縁に素直に応えてこられたということですよね。また、「ハウス」と「ホーム」のお話がありましたが、常に自分たちが何者で、何が使命なのかということを問い続ける姿勢を垣間見た思いです。『北陸ミサワホーム株式会社』というフレームに、いい意味でとらわれずに、自分たちの役割やご縁を活かしていく、繋いでいくという、そういう企業体としての自然な姿勢を感じることができました。

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