後編

社会貢献活動を大切にするコマニーの企業風土。

第20回放送

コマニー株式会社 代表取締役 社長執行役員

塚本健太さん

Profile

つかもと・けんた/1978年、石川県小松市生まれ。星稜高等学校吹奏楽部時代にサックスに出合い、東海大学経営工学部中退後、サックスで音楽の道を志す。しかし創業家としての使命を果たすことを決断し26歳で就職を決意。2006年、『京セラコミュニケーションシステム株式会社』に入社し、営業と経営管理を担当する。2009年、『コマニー株式会社』(1961年創業。パーティションの開発、設計、製造、販売および施工を手掛ける)入社。経営企画、経営管理などの管理部門と営業責任者を経て、2019年、創業家3代目として代表取締役社長執行役員に就任。

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Tad 前回は震度7相当の地震に耐えられる間仕切り「シンクロン」という新製品のお話をいろいろとうかがいました。今の日本に求められている製品でしょうし、発表するなり売れたのではないかと思うんですが、いかがですか?
塚本 ところがどっこい、です。
原田 そうなんですか?
塚本 高耐震間仕切り「シンクロン」ができた、そこまではよかったんですが、当初まったく売れなかったんです。というのは、発想と機構が非常にシンプルなだけに、他社が見てもわかりやすい構造にできあがったんですね。そこで当社の開発陣や営業も、どうやって他社に知られることなく営業できるかという意識になり、肝心のお客様にさえ詳細のご説明をできずに販売をしていたという経緯があるんです。そうすると当然、お客様は商品のことをなかなか理解できず、売れないということになって、船出はそんなに順調ではありませんでした。
原田 そうなんですね。たしかにお客様としては不審に思ってしまうかもしれませんね。
塚本 今思えばまったくお客様の気持ちになれていなかったということですね。
原田 その方針を転換されたということですね?
塚本 そうです。ある時に役員や幹部が集まった場で、「この『シンクロン』を世に出していかないでどうするんだ」と議論になりました。他社に真似されようがそれはいいじゃないかと。「地震大国・日本を地震に強くするためには、他社も自社も関係なく、間仕切りは高耐震があたりまえだという世界を作ろうよ」ということで社内が盛り上がったのです。そこで、真似されても構わないから全部オープンにして、高耐震間仕切りの「シンクロン」を売っていこうということで方針を大転換しました。プレス発表もしましたし、それこそテレビなどにも秘密の機構のところを全部映していただいて、業界全体で、日本を高耐震化する間仕切りの方向に促す大転換をしたんですね。その後、ぐっと売り上げが伸びました。
Tad 最初は他社に真似されないうちにシェアを取ってしまおうというような発想だったのが、逆にオープンにしていくことで、結果的にはシェアが広がっていったということですね。
塚本 そうなんです。お客様の理解も急に進みまして、結果として二桁以上の伸びを示しました。
原田 やっぱり他社も追随していくような方向になったのですか?
塚本 当初、我々もそれをすごく怖がって秘密を隠そうというふうにしていたんですが、意外と他社がすぐに真似できるようなものではなかったということが、後になって分かったんです。まず開発に4、5年かかっていますし、実際に地震の揺れに実効性があるものを作ろうということで、300回以上は地震の装置でテストをして多くの間仕切りを地震波であえて壊しながらノウハウを蓄積していったものですから、他社が簡単に機構だけを真似して性能を引き出すということが、おそらく今のところはできていないのだろうと思います。
Tad それぞれの部材がどういう剛性やしなやかさを持っているか、といったことの組み合わせで製品が成り立っている、そういう機構だということで、それを他社が一部分だけ真似をしても、全体としては同様の性能にはならないということですね。「シンクロン」が日本中に広がっていくことはすごく意義のあることだと思いますし、それがある意味、あたりまえになっていけば、世の中は変わっていきますよね。幹部の皆さんの会議の中で出た「これを世に出さないでどうするんだ」という思いは、社会的使命のように感じます。
塚本 やはり日本は地震が多い国です。当社は、東日本大震災以降、事業に関わる・関わらないを問わず、災害が起きた時には社員が被災地へボランティアに行くという取り組みをおこなっております。おそらく日本で一番、被災地でのボランティア経験のあるメンバーの多い「間仕切りメーカー」だと思います。
被災地ボランティアは社員自身の良心が行動となり、主体的に活動している。
原田 実際、社員の皆さんは被災地の現場を見てきて何が必要であるかということを肌で感じていらっしゃるということですよね。
塚本 はい。肌で感じて、これは高耐震化の間仕切りが必要だと実感してくるわけです。そういう意味では開発者も熱い思いがありまして、実は一回の地震の実験で3万データくらいのビッグデータが生まれるのですが、これを分析しようと思うと並大抵の持久力では不可能なんです。その実験を繰り返し、あきらめずにできたというのは、開発者である彼らが実際に被災地を訪れ、悲惨さを知っているという背景があるからだと思います。
Tad 話は変わるかもしれませんが、『コマニー株式会社』といえばSDGsへの取り組みをすごく充実されていらっしゃると、この間、会社訪問させていただいた時に実感しました。これも今のような考え方で、会社をあげて取り組むべき課題と捉えていらっしゃるということでしょうか?
塚本 当社は理念教育に相当力を入れています。そもそも人はなぜ生きるのか、なぜ働くのか、使命とは何なのか、そういった人生の価値観や仕事観などを考える教育を進めているんですが、そうすると社員一人ひとりがいろいろな社会問題にも目を向けるようになり、それこそ震災や豪雨などの災害の場合は、社員自ら「支援に行くべきではないでしょうか」という声が自然とあがるような風土が醸成されていったんですね。SDGsは国連が世界をよくしようということで生まれたものですが、そういう中でむしろ後押しをいただいたくらいの感じで、当社は元々、それ以前から、どうやって社会に貢献していくかというマインドを持っていた会社だったということだと思いますね。
原田 被災地へのボランティアも含めて、他には具体的にどんな活動を進めていらっしゃるのでしょうか?
塚本 災害ボランティア以外では、例えば地域の福祉施設と連携をさせていただいたり、小松市でもSDGsのパートナーシップ協定を結ばせていただいたり、海外なら、例えばカンボジアのような途上国に図書館を造ったり、井戸掘りに行ったり、そういった支援をさせていただいております。
カンボジア支援の一環では「かけはし」という図書館が建設された。
原田 そうすることで社員の方の見識、視野も広くなりますし、それが仕事に活かされるというのは大きいんじゃないかなと思います。
塚本 おっしゃる通りです。例えば普段「生きていることに感謝をしましょう」であるとか、「一生懸命働きましょう」といったことを言葉で言ってもなかなか伝わらないのですが、水道もない貧しいカンボジアの村に行ったメンバーは、蛇口をひねると飲める水が出るというだけで涙が出るほどうれしいことだとわかる。そうすると、恵まれない環境に生きている子どもたちに対して「自分は与えられた環境で、日本でもっと頑張らなきゃいけないんじゃないか」ということを肌で感じて帰ってくるわけです。そういう意味では我々は「ボランティア」に加えて「人材の育成・教育」という観点でも積極的に取り組んでいます。
Tad そういったところで得られたものは製品開発にどのように活きていますか?
塚本 例えば先ほどの高耐震間仕切りなんかもそうですし、カンボジアなどは日本のように整備されたトイレがないですから、そこでいかにトイレを快適に使っていただくかということや、健康な人もハンディキャップがある方も使いやすいユニバーサルデザインのトイレとか、そういったことに熱心に取り組む研究者もいます。しっかり還元されていると思いますね。
Tad 塚本社長はSDGsの活動をどのような目線で見ていらっしゃるのでしょうか?
塚本 結局、企業が生き残っていくためには地球が残らないといけないし、人類が長く繁栄し続けるだけの環境、世界をつくっていかないといけません。当然、企業は地球、世界があるから生き残れるわけです。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」という概念がありますが、この「世間よし」というところが、ある意味、今は「地球よし」ということで、環境面においても世界中の人々が幸せになれる考え方で事業を行わなければ、いずれ人々から「この企業はいらない」と言われてしまう時代が来るのではないかと思います。地球レベルと言うと少しおこがましいようですが、「地球よし」の観点で事業をしていくのが大事かなと思っています。
Tad なるほど、「地球よし」は初めて聞きました。
塚本 我々の工場でもソーラーパネルを追加で載せるなどして、エネルギーに対する環境負荷を減らそうとしていますが、今までは、その経済的合理性、つまり企業がそれでペイできるのか、果たして儲かるのかという観点だけで見ていたと思うんです。ですが、さらに加えて「その投資は地球環境に対してどのような影響を与えるのか」、「それは世の中に対してどういう意義があるのか」と主体性をもって判断していくということが、これからの経営なのではないか思っています。
Tad ありがとうございました。
プロフィールでもご紹介の通り、塚本さんはプロのサックスプレイヤーを目指していたそうです。今回、実は無理を言ってサックスを持ってきていただきまして、生演奏をしていただけることになりました。
ラジオの収録当日、サックスの生演奏を披露してくださいました。曲は塚本社長が作曲したオリジナルです。

ゲストが選んだ今回の一曲

塚本健太さんオリジナル曲

「Lovers」

「私がミュージシャンを目指していた頃に作った曲です。当時はまだ若かったのでタイトルの意味としては恋人のイメージで作りましたが、今思えば、それは家族であり、また地球上の人間である、そんなふうに感じています」


トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『コマニー株式会社』代表取締役 社長執行役員、塚本 健太さんをお迎えしましたが、いかがでしたか、原田さん。
原田 素敵な演奏を聴かせていただきましたね。まるで人が歌っているような、想いが伝わる音色でしたね。
Tad 胸がいっぱいです。MROさんは塚本社長にミュージシャンとしてぜひオファーしたほうがいいと思います(笑)
原田 子どもたちの未来ってどうなるんだろうと、ちょっと不安になるような今という時代の中で、塚本社長から「地球が守られてこその、みんなの幸せだ」という大きなお話がありましたが、そのように考えることができる企業が増えていったらいいなと思いました。同時に、自分自身の生活もいろいろ見直そうというきっかけにもなりました。Mitaniさんはいかがですか?
Tad 石川県のリーディングカンパニーとしての矜持を感じました。私自身は、高耐震間仕切り「シンクロン」、このお話がとても興味深かったです。普通の経営者や普通の営業マンなら、シンプルな機構だからきっと真似されてしまう、だから構造をトップシークレットにして、お客様にすら説明もままならないままに、秘密裏にシェアを取ってしまおう――自然とそう考えると思うんです。ただ、「世に送り出さないでどうするんだ」と、真似されてでも広める価値はあるんじゃないかと、オープンにすることで結果的には多くのシェアを獲得されていった。「自分たちがよければいい」という発想ではない、それが前提にあるわけじゃないというのが、後半のSDGsのお話にあった「三方よし」の「地球よし」という考え方に通じるような気がしました。新しい時代のビジネスのヒントをいただいたような、そんな気がしています。

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