後編

新しい不動産の在り方を模索し、投資をぐっと身近な存在に。

第41回放送

エステックホールディングス株式会社

代表取締役社長 武部 勝さん

Profile

たけべ・まさる/1968年、石川県金沢市生まれ。1991年、名城大学理工学部卒業後、『大東建託株式会社』入社。1993年、父親が経営する会社に入社。2002年に独立し、『エステック株式会社(現・エステック不動産投資顧問株式会社)』を創業。2013年に『エステック不動産』、2019年に『エステックホールディングス株式会社』、『エステックアセットマネジメント株式会社』を設立。

2022年1月に20周年を迎える『エステック不動産投資顧問株式会社』。
Tad 今回のゲストは前回に引き続き、『エステックホールディングス株式会社』代表取締役社長、武部 勝さんです。プロフィールを改めて伺いますと、最初は『大東建託株式会社』にいらっしゃり、そしてお父様の経営されていた会社にもいらっしゃったそうですが、お父様の会社というのはどんな会社だったんですか?
武部 父は不動産業をしていました。地元の農家の方とか、地域に根差した不動産業でしたね。
原田 小さい頃からお父様のお仕事ぶりを見ていらっしゃったんですね。
武部 はい。仕事で最初に触れたのが不動産でした。
Tad 一貫して不動産に関するキャリアを積まれているように見えるんですが、独立された経緯をお伺いしてもよいでしょうか?
武部 父はもともと、不動産業は一代限りと言ってました。自分が好きな仕事は不動産だったけど、息子にまでさせたいとは思わない。だから自分で好きな道を歩んでくれと、子どもの時からそう言われていたんです。ですがそうすると逆に興味が湧くのも不動産で…(笑)
Tad 家業というのは、そういうものなのかもしれませんね。
武部 もしかしたらうちの父が一番賢かったのかも。
原田 なるほど。それでお父様とはちょっと違うやり方で自分はやってみようということで、独立なさったわけですね?
武部 はい。『大東建託株式会社』の東京本社にいた時に、バブル期とその崩壊を目の当たりにして、これからの不動産は地域に根差すことも大切であると思いました。それ以上に加工する能力と企画する技、そういったものが必要になってくる。もちろん人間関係も重視するんですが、社名の「テクノロジー」の部分(註:社名の「エステック」は「Estate」と「Technology」を合わせた造語。詳細は前回を参照)をいかに身に着けていくかというところで、どちらかというと地域に根差した父のやり方も魅力はありますが、一方で「真っ白な状態からやってみたい」ということを父に言ったら、「やれ」と。「金は出さんけれど仕事は教えてやる」、そう言われました。
Tad それでは、修業期間のようにお父様と共に仕事をなさっていたのでしょうか?
武部 そうですね。父は最初から私が独立するであろうということは分かっておりましたので、与えられた時間で目一杯教えてやろうと、非常に厳しく育ててくれたと思います。私が子どもの頃以上に厳しかったような気がします。
原田 それは息子のその後のことを思ってですよね。
武部 今考えるとありがたいですよね。当時は正直、腹が立つこともありましたが、今考えると「あの時に叱ってくれてありがとう」という気持ちです。今はできないですが、あの時だから訊けた、あの時だから直せたということが、今思い当たるだけでも多々あります。
Tad そういった新しい不動産業の在り方を武部さんご自身が模索されて現在の形にたどり着いたのだと思いますが、近年は沖縄でも活動されているとうかがっています。いったいどんなことをされているのでしょうか?
武部 沖縄の会社を当社で取得させていただいたというご縁がありまして、その社長の依頼がきっかけです。また、社長自身が石川県七尾市の出身なんです。
原田 偶然ですか?
武部 偶然です。ただ、もともと知り合いではありました。そういったことで、私どもは官民一体開発型の不動産証券化の事例として松任駅前の駐車場の実績もありますので、こういった事業を継続してやりたかったんですが、どうしても人員がいない。地方に、俗に言うファンドマネージャーというのがなかなか集まらないのですが、沖縄には金融特区がありますので、人材が豊富であることから、沖縄のこの会社とご縁を持つことになりました。
それで一緒に北陸で、松任の駅前のような事業を反復・継続してやれる体制を作ろうと動いています。あの頃はその物件に集中していました。そして十数年経った今、一度も未配当がない、配当しない年がない、という状況まで育て上げることができました。一方で、我々は反復・継続する力がなかった。沖縄の皆さんの力を借りて、我々は継続的にこの事業をやっていきたいということで、これからは北陸で集めたお金で、北陸に投資するという「富の循環」を実現したい。今年当社として新たなファンドを北陸で作りたいということで、動き始めたところです。
Tad 沖縄のプロジェクトみたいなものでいうと、具体的にはどんなことがありますか?
武部 まず沖縄から、応援で人員が金沢に入っています。一方で、沖縄でも三つのファンドを保有しております。一つは不動産ファンド。これは松任の駐車場と同じような仕組みを継続してできる器がございます。そして、動産ファンドです。これは日本に例がないファンドです。実際は空調設備、電気設備、場合によっては消防自動車、救急車まで。こうした動産をファンド対象とするというところでやっておりまして、すでに名護市のほうから昨年、受注もしました。空調の入れ替えですね。
Tad 動産…設備だったり、自動車だったり?
武部 はい、そうですね。
Tad 普通はリースになったりすると思うんですが、動産ファンドというのは成立するんですね。
武部 実際、我々は動産に償却率をかけることで、最後に行政の方が取得しやすい環境に、むしろゼロに持っていくまでお付き合いをさせていただきます。リース会社のように料率や期限があるものではありません。我々は任意で設定できますので、発注者の行政のニーズに沿うようにプラニングできるというところが特徴です。
Tad 取得する時のタイミングで予算があるかどうかは分からないし、例えば10年後にその予算を確保しておくというのは、あまり現実的ではないですよね。期間の限界というか、制限がありますから、会計上の価格が何割か残っていて、それを自治体なり、企業が取得しようとする時には、そのお金を払わないといけない。
武部 そういうことです。
Tad 動産ファンドであれば、それを自由に期間設定ができるということですか?
武部 そういうことです。自由に期間設定ができますし、減価償却が目に見えますので、リースの料率とは全く違うんです。
原田 自分たちのものになる時にはお金を払わなくていいということですね。
武部 はい、そこまで持ってくれと言われれば、我々は持ちますと。最後の減価がゼロになれば、置いていきますと。
Tad 価値を償却し終わったものというふうにみなせるんですよね。
原田 革新的ですよね。
武部 今、日本では我々しか保有しないファンドです。これを第2弾としてぜひ石川県に導入したいと考えております。
『エステックアセットマネジメント株式会社』は、東アジアにおける「Only One」の投資銀行の実現を目指し設立。
公共施設の維持管理にアセットファイナンス事業を導入した。
原田 三つのファンドをやっていらっしゃるということでしたが、不動産ファンド、動産ファンドと、もう一つはなんでしょうか?
武部 もう一つはプライベートエクイティファンドといいまして、当社としては初の試みです。今まではどちらかというと安定した配当を重視して、我々が業界用語で言う「出口」の時に儲かりませんよというファンドが主流でしたが、こちらのファンドは成長企業・成長する産業というものに対して直接投資をかけるファンドです。これは沖縄に設立しましたが、地元の金融機関に大きな金額を出資していただいて、そこでこれから起業したい、会社を起こしたいというところで、この業種、この商売が成長するなというものに対して積極的に支援していくというファンドです。
原田 具体的にはどういうことですか?
武部 今、第一号で我々が採択させていただいたのは「船上ホテル」です。沖縄は世界の皆さんから注目されて、これまでもたくさんの観光客が来ていますし、世界有数のきれいな海を持っていてダイバーに非常に人気があります。ところが、沖縄には一艘の船上ホテルもない。つまり、ダイバーは日帰りで帰っていくんです。それを繰り返すのではなくて、船上で泊っていただいて、朝、夜ときれいな海にいつでも潜れるようにという提案を、我々は選ばせていただきました。
原田 ダイビングスポットにそのホテルが浮かんでいるようなイメージでしょうか?
Tad それはダイバーの方にとってはたまらないですね。沖縄らしい新事業ですね。
原田 こういったものが石川県にもできるんですか?
武部 石川県にもきれいな海がありますが、石川県は石川県でこの地域に根差し、マッチした新たなビジネスを起業したい方のための器というものも、我々は考えていきたい。そうすると、また違う考え方の資金が必要となってきますので、その時にはまたみなさんにご説明させていただいて、ご賛同いただけるようにしていけば、今後石川でもプライベートエクイティファンドができるんじゃないかと考えています。
Tad さっきの船上ホテルですと、沖縄県外の方が利用されることも多いと思いますし、県内の方ももしかしたらダイビングスポットの真上で泊まれることが魅力的でしょうしね。石川県ですと、どういうテーマがあり得るんでしょうか?
武部 それを考えるだけでも、楽しいですよね。石川県に今足りないものは? あると喜ばれるものは? 県外の方が「これがあるから来たい」と思うものは何なんだろう?――そういうところの積み重ねにご協力できるというのもうれしいです。
Tad 地元のお金がそこに投資されるというモデルも、すごくいいですね。
原田 いいですね。最初はなぜ沖縄と石川で? と思いましたけれども、相互関係がすごくいい形で回っている感じがしますね。
武部 今、小松空港と那覇空港は一日一便、直行便で繋がっています。石川と沖縄の交流は非常に盛んです。そういったことでいうと、私も知っている何人かは沖縄にすでに住まいを持っていらっしゃいます。
Tad 石川県内の人で?
武部 そうです。やはり寒い地域と温かい地域、その両方を行き来できるというのは夢の生活です。やっぱり相関関係があるということです。
Tad なるほど。新しく求められるものに対しても、そこに迅速に資金がついていくことによって、社会の変容とかイノベーションが進んでいくということでもあるんですね。
不動産の初期投資ゼロ・財務負担軽減を実現し、地域の事業展開をサポートしている。

ゲストが選んだ今回の一曲

SMAP

「世界に一つだけの花」

「当社自身が不動産業でありながら金融業でもありますが、蓋を開けてみると、当社より大きなファンド、当社より大きな不動産屋がいっぱいあります。そういった中で、我々は県外、海外のファンドと戦い、地元から出た東京の大手不動産会社と競争しないといけない。そういう時に、我々が生き残る道というのは規模の争いではなくて、他社との差別化をどうしていくかということを社内でいろいろと議論している中でヒットした曲なんです。まさに当社がこれからあるべき道に沿った歌だなということで、好きになりました」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回は前回に引き続き、ゲストに『エステックホールディングス株式会社』代表取締役社長、武部 勝さんをお迎えしましたけれども、いかがでしたか。
原田 拠点が沖縄にもあるとお聞きして、沖縄にもあることで石川の可能性も広がるんだなということが感じられました。普段はあまりファンドについては意識して生活していないんですが、石川県ではどんなファンドができるのかなと、わくわくしました。
Tad 不動産とか金融商品というと、利回りがいくらとか、元本がいくらからみたいに、儲かるか儲からないかのドライな話のように思えるんですが、武部さんのイノベーションというのは、投資家自身の共感があったり、地域の人たちのニーズ、不足しているものと、不動産や資金というものの使われ方が見えてイメージできるぐらいに、投資をぐっと近いところまで引き寄せたことだ思います。不動産も動産も、金融というものも、こんなものがここにあったらいいのになということを実現する手段であることを再認識させていただけたと思います。興味深いお話でした。

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