前編

エンタメでドローンの新しい価値を生み出す。

第46回放送

株式会社ドローンショー

代表取締役 山本 雄貴さん

Profile

やまもと・ゆうき/1983年、石川県金沢市生まれ。東京工業大学の経営工学科を卒業後、2006年に三井住友銀行に入行。2007年に独立。その後、会社の売却やM&Aに伴う移籍などを経験。2017年に金沢に戻る。2020年、『株式会社ドローンショー』(石川県金沢市泉野出町)設立。

インタビュー後編はこちら

Tad 原田さん、まずはこちらの画像をごらんください。
原田 え、この光はなんですか?
金沢港でのドローンショー
Tad 実はこれ、ドローンなんです。これはドローンによる夜間のショーの写真です。
原田 ドローンにライトがついていて、それが夜空を動いているっていうことですか?そんなショーがあるんですか?
Tad そうなんです。そんなショーを手がけている会社が、実は石川県にあるんです。今回のゲストは、『株式会社ドローンショー』代表取締役、山本 雄貴さんです。
原田 ドローンショー、初めて見ました。すごい!びっくりしました!
山本 ありがとうございます。ドローンを使った新しいビジネスの形ではあるんですけれども、現状の日本国内において、弊社のようなドローンショーの事業は、国内初になるのではと思っています。
Tad 海外ではどうですか?
山本 海外ではもう3、4年前から盛んになってきているんですが、有名なところでいうと、平昌オリンピックのときに、ドローンを使って五輪を描くショーをやっていたかと思います。それを知っている方は多いかもしれません。
Tad ドローンショーというのは、どんな可能性を持っているエンタテインメントなんでしょうか?
山本 まず簡単にドローンショーがどういったものなのか説明します。ドローンは自社で作っているんですが、ドローン一つずつに大きなLEDライトをつけるんです。それを同時に何十台・何百台という数を自動制御で夜空に飛ばして、光の点滅や色のパターンで夜空に形を描くというのが、世界的に呼ばれている「ドローンショー」というものです。実は日本国内ではドローンに対するイメージは最悪だなと思っているんですよね。
原田 最悪なイメージですか?
山本 はい。総理官邸にドローンが墜落したり、盗撮であったり、そういったドローンに関してはネガティブなニュースばかりが日本では広まっていて、イメージがすこぶる悪いんです。そんな中でも、ドローンの良さというのは確かにあって、産業として活用すれば世の中がもっと変わると思っています。可能性に満ちているんですが、まずはそのイメージを払拭しなければいけないと感じたのが、僕にとっての「ドローン業界」なんですよね。一発でいいイメージに変えられるものはないかなっていうところで、僕はもともと携帯のゲームを作ったりしてエンタテインメント業界におけるサービス歴が長いので、その領域でドローンを使いたいという思いがありました。そこで「一般の方たちが何気なく見て、感動や喜びを得ていただければ、世の中のドローンに対するイメージがもっと明るくなるんじゃないか」、そんな可能性を感じて事業を進めています。
原田 先ほど平昌オリンピックの話がありましたが、山本さんご自身もそれがドローンショーを初めて見たタイミングだったんですか?
山本 はい。ライブでは見てなかったんですけれども、そのあとYouTubeに上がっているのを見て、それを見たのが2019年の9月の初め頃だったかと思います。それを見るまでは、僕もドローンに対するイメージっていいのか悪いのかもあまりよくわからなくて、事業として成り立つかもわからなかったんですが、たまたまその映像を見て、ドローン自体を見ることで、感動や喜びを与えられるんだということを感じて、衝撃を受けました。「これはおもしろい」と思って調べてみたら、日本ではどうやらそういった業者はないらしいというところで、のめりこんでいきましたね。
Tad 先ほどの画像を見た感じだと、星座が動いているような感覚を受けました。
山本 まさに、今後そういった見せ方も可能ですよね。これまではプラネタリウムや室内で、テレビの延長として見せることしかできなかったと思うんですが、本当にライブで、外で、星に近い見せ方で星座を表現することも、技術的には十分可能だと思います。
Tad 花火のようでもありますね。
山本 おっしゃる通りです。「花火大会をドローンでやりますよ」っていうような形で宣伝をすると、「あー、なるほどね!」と理解していただけるのかなと思います。
原田 カラフルにもできるんですか?
山本 1つのドローンに光の三原色がすべて入っていて、その点灯パターンで、理論上すべての色を表現できるんです。
Tad ほかにはどういったドローンショーの形態があり得るんでしょうか?
山本 まだ研究開発段階ですが、インドアでドローンショーをやるっていうのも実は弊社で開発しています。これは技術的にもかなり難しいところはあるんですが、それがもし実現できたら、例えばミュージカルやライブコンサートなどで、今までレーザービームや音響など、見る側と演じる側の間に明確な区別があったんですが、ドローンで舞台を飛び出して、観客席の方に動いて行って、一体感を持たせる演出というのは可能なんじゃないかなと思いますね。
Tad ドローン自体がどのように動いているのか、どういうふうに制御されているのかが気になりました!
山本 たまに誤解があるんですが、あの動きに関しては1個1個パイロットが動かしているというわけではなくて、弊社で3Dのアニメーションソフトでショーのイメージを最初に作ってしまうんですね。そしてパソコン上で動きを確認して、そのデータを独自開発したソフトウェアに認識させて、ドローンに命令を飛ばして自動運転させるという感じです。
アニメーション制作現場の様子
Tad 各ドローンが「自分の与えられた役割はこれだ」というGPS情報のようなものをもらって動くんですか?
山本 そうですね、GPSの位置情報とスタートしてから何秒後かの位置情報、これを「パスファイル」っていうんですが、そういった情報を各ドローンが個別に持っていて、その通りに動くというわけです。
Tad 「パス」っていうと、道という意味だと思うんですが、そうですか?
山本 そうですね、軌道をドローンが認識しているということです。
Tad 何秒かけて何十センチ移動する、何秒かけて何メートル移動するっていうのを繰り返していって、一つの絵になっていくということですか?
山本 そうですね、パラパラ漫画みたいなもので、一秒後にこういう位置にドローンがいて、そのさらに一秒後にここにいて、その始点と終点はこういうふうに動く、そういった感じです。
原田 ある意味、画面から飛び出してきたというような印象を受けました。パソコン上で作った動きが本当に実際の空間で繰り広げられて。
山本 夜空にすごく大きな人型なんかがいきなり動いたりですとか。そういった世界の事例がYouTubeを見ればたくさんあるのでご覧になっていただければと思うのですが、SFの世界だなあと思います。新しい表現方法としてはおもしろいと思います。
Tad ファンタジー映画の妖精がたくさん飛んでいるような印象もありますね。ぜひリスナーのみなさんにも『株式会社ドローンショー』のホームページを見ていただきつつ、お話を聞いていただければと思います。ところでドローンショーというのは、どんな時に行われるものなんですか?
山本 新型コロナウイルス感染拡大の影響もありなかなか難しくはあるんですが、もともと立ち上げたときには、地域のお祭りであったり、毎年恒例のイベントを想定していました。そういったものってマンネリ化してなかなか集客が難しいところがあると思うんです。花火大会もまさにそうですが、そういったところで、視聴者は常に新しい演出や驚きを求めています。驚きがあれば、今ではSNSを通じて簡単に拡散できる時代ですので、そういった方たちに拡散していただくことによるPR効果っていうのも狙っていたところではありますね。ただ、今こういう時期になって、単純に人を集めるということができなくなったので、ここからはちょっと前人未到といいますか、新しい表現方法で挑戦できるかどうかというのは、知恵の出しどころかなとは思いますね。
原田 日本で今まであまりそういったものがなかったっていうのは、何か理由があるんですか?
山本 それはもう、明確に理由がありまして、まず大前提として、世界においてドローン産業・ドローンビジネスっていう意味では日本は圧倒的な後進国なんです。ドローンのハードウェアでいうと中国の『DJI』というところがシェアのほとんどを占めているんですが、ソフトウェアの領域でも日本はまだ全然これからっていうところなんです。その理由というのが、日本の法規制なんです。そもそもドローン自体を規制する法律っていうのは存在しなくて、ドローンは無人航空機という扱いですので、航空法と、電波で飛ばしたりするので電波法っていうのがあって、これらの掛け合わせでドローンを規制しているのが現状なんです。それだと規制が厳しすぎるんですよね。自由に開発して、簡単にその辺で飛ばすっていうこともできないので、それが日本国内でドローンビジネスが生まれてこない大きな要因の一つだと思います。
原田 スペース的な問題もあるわけですか? 例えば地方だと飛ばせる広さはありますが、東京では飛ばせない、ですとか。
山本 東京だとほぼ飛ばせないです。人口集中地区というのがあって、そこでは国土交通省に事前申請がないとドローンは飛ばせません。それを見てみると東京や関東圏はもうどこも飛ばせる隙がないんですよ。でもその反面、スタートアップっていうのは東京で生まれやすい。そういうこともあって、僕が縁あって石川に戻ってきて、新しい事業を探しているときに、これこそ東京以外で立ち上げるメリットが大きいということで、この事業を始めたんです。
Tad 石川県内は割と飛ばせるかといわれたら、飛ばせるほうなんですか?
山本 そうですね、金沢の中心街とか、その周辺地域はさすがに飛ばせないんですが、そこから車で15分とか20分離れてしまえば、そういう規制が緩くなっていて、自由に飛ばせる場所が多いです。
Tad これからこのドローンショーっていうものが日本全国で、いろいろなイベントに出てきて、そのイベントのテーマに合わせたショーをやっていく、ということになるのでしょうか?
山本 ドローンショーっていうのも、今はまだ物珍しいとは思うんですが、プロジェクションマッピングと同じような市場の拡大をたどるのかなと思っています。今ではプロジェクションマッピングってよく知られた演出ではありますよね。結婚式の披露宴でも使われるようなお手頃な感じになっている。おそらくドローンショーも、今は珍しいですが、これからどんどん事例を作っていって、そのうちに今では思いもしないような場所で、あたりまえのように使われるというようなことが起こるかなと思っています。私の狙いはまさにそこで、1つの事業として会社を当然成長させたいっていう思いはあるんですが、それだけにとどまらずに、広く産業っていうものを石川から発生させたいっていう思いが強くあります。

ゲストが選んだ今回の一曲

Aqua Timez

「決意の朝に」

「大学を卒業してすぐ銀行に入ったんですが、銀行勤めをしながらある投資家さんに出会ったのが起業のきっかけでして、銀行を辞めて企業を立ち上げるぞって決めたんですが、なかなか『やめます』っていうのを上司に言えなかった。『明日こそは言うぞ』という気持ちで日々迷っていたんですが、その時にたまたま出会ったこの曲に勇気づけられた思い出があります」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『株式会社ドローンショー』代表取締役社長、山本 雄貴さんをお呼びしましたけれども、いかがでしたか、原田さん。
原田 山本さんは笑顔で、エネルギッシュにこのドローンショーの魅力について語ってくださって、まずは実物を見てみたいなっていう思いがすごく強くなりました。
Tad 新産業を作るのが野望だというふうにおっしゃっていましたね。産業っていう言葉も難しいんですが、自動車産業にたとえて言いますと、エンジンというコア技術があって、自動車っていう技術があって、それがタクシーやバスなどの運送業に応用されて、物流業とか、車を販売するためのいわゆるサービス技術があって…という3つのレイヤーが存在していますよね。ドローン技術をコア技術とすると、エンタテインメントという応用をしたことでドローンショーを作る。次にイベントだったり企画・広告、それからアートみたいなものにドローンが使われたり、プラネタリウムみたいな話もされていましたが教育コンテンツになったりというように、周辺領域が新しいビジネスチャンスになっていく。そういったことを包括して、新産業を作りたいというふうにおっしゃったかと思うんですが、石川県がその中心地となるかもしれないという話に、わくわくしました。

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