後編

多くのリピーターを獲得し能登を盛り上げる。

第65回放送

株式会社ナカガワ 代表取締役社長

中川広紀さん

Profile

なかがわ・ひろき/1985年2月、羽咋郡志賀町生まれ。羽咋高校、金沢大学経済学部を卒業され、2007年、三谷産業に入社。営業職を経験後、2012年9月退社。家業を継ぐべく株式会社ナカガワに入社、2014年4月に代表取締役社長就任。株式会社ナカガワは創業1962年。総合ギフト販売、貸別荘、サーティワンアイスアルプラザ鹿島店の運営を行っている。

ハートランドヒルズ in 能登

インタビュー前編はこちら

Tad 今回のゲストは先週に引き続きまして、株式会社ナカガワ代表取締役社長の中川広紀さんです。どうも、あけましておめでとうございます。
中川 あけましておめでとうございます。
Tad 年末年始のお忙しい時期に、お子様が生まれたばかりだというのにお越しいただいて。ありがとうございます。
中川 いえ、こちらこそありがとうございます。よろしくお願いいたします。
原田 今年はこんな年にしたいなど、抱負はありますか?
中川 昨年はコロナなど色々ありましたから、やはり今年は明るい年にしたいなという風には思いますね。
原田 中川さんは、2012年9月に三谷産業を退社されておられるんですよね。ということは、Tadさんとはちょうど入れ替わりだったのですね。
Tad そうですね、僕は2012年の10月1日からなので、本当に1日違いでした。
原田 あれ?Tadさんって……?
Tad って三谷社長が言ってた、って聞きましたよ。
原田 はいはい(笑)
Tad TadはあくまでTadという、この設定はいつまでやったらいいのでしょうね?
原田 どうなんでしょうね(笑)
Tad 会社の歴史をお聞かせいただきましたが、最初は布団屋さんをされていて、現在はギフトショップを運営しておられますが、その変化の理由についてもお聞きかせいただけますか。
中川 はい。現在、ギフトショップ『シャディ』を2店舗運営しております。祖父の代に布団屋からスタートして、父の代になって、やはり能登は人口も限られているので、同じものを売り続けるよりは、色々買っていただけるようにした方が、事業拡大といいますか会社の発展に繋がっていくだろうということで、ギフトショップを始めたと聞いています。
Tad それは志賀町にはないものを提案しようという思いだったのでしょうか。ギフトショップは色々なものが手に入る場所ですが、やはりオープン当時は地元の方々の選択肢を増やしたいという思いがおありだったのでしょうかね。
中川 ないものを作る、というと大げさですが、やはりそのようなものを提案することによって、地域の人にも喜んでいただけて、それが商売になってくんじゃないかという考え方ですね。
原田 サーティーワンアイスクリームもそういう思いなんですよね。地元の人が喜ぶ、地元の人のニーズに応えたいという気持ちがすごく強くていらっしゃったということですよね。
中川 そうですね。
Tad 一方の貸別荘やキャンプ場は、割と、地元の人向けというより、域外の方々が来られるかと思うのですが。県外、県内のお客様の比率というか、どの辺りからを中心に来られているのでしょうか。
中川 今では新幹線もつながっていますから、遠方から来られる方も多いのですが、実は圧倒的に多いのは石川県内のお客様です。特に金沢のお客様にたくさんご利用いただいている印象があります。
Tad 車で1時間から1時間半のちょっとした遠出をして、そこで宿泊して、バーベキューなんかを楽しみ、非日常に浸る――。確かに贅沢ですよね。
原田 しかも、普段の生活と同じような部分があるから、事前準備もホテルよりも多くなるわけですが、それもまた楽しい部分かなと思います。
中川 貸別荘には3時頃からチェックインできるのですが、金沢からのお客様なら、昼前に出発して、ちょっと買い物をしながら、「今日はバーベキューだから、あれ買おうこれ買おう、せっかくだからこれも買ってみよう」って、話しながら来られると思うんですよ。出発時点から、別荘を楽しむということは始まっているのかなという気はしますね。
原田 そうですね。しかも子供ってあまりにも移動距離が長いとそれだけで疲れてしまいますが、1時間や1時間半程度なら楽しい状態のまま行けますものね。県内のお客様が多いのには納得がいきますね。
中川 志賀町にあるというのが、遠すぎず、近すぎずの距離で、ちょうどよかったのかなと勝手に思っています。
原田 周囲の自然も素晴らしいですし。
中川 そうですね。周りは海ですから、夏は海水浴も楽しめます。海がきれいですし、おいしい海の幸もあるので、そういう能登らしさを楽しみに来られる人も多いですね。
海に面した高台にあるオートキャンプ場「いおりリゾート」。
Tad お父様が地元の人向けだったり、県外や遠方から来る方を含めたお客様向けであったりと幅広くお客様を見据えてご商売をされている印象ですが、お父様の事業や経営に対するそのお考えは、中川さんご自身に継承されている部分はあるんですか?
中川 父と直接、経営理念だの方針だのということを話したことはないのですが、一緒に過して感じるのは、僕たちは商売人なので、お客様があって初めて僕らがあるということです。お客様が何を求めているとか、お客様にどうしたら喜んでもらえるのかを考えることからすべてが始まっているのかなという気がしています。ですから、今、色々なものを扱っていますが、根底にあるのはお客様に喜んでもらいたいという一心です。たまたまそれがギフトショップやアイスクリームショップや、宿泊体験になっている、ということかなと僕は思ってます。
原田 なるほど。中川さんご自身としては家業を継ぐぞというのは前々から思ってらっしゃったことなのですか?
中川 そうですね。あの…、そうなるともう前の会社を「辞める前提だったのか」となりますので…
Tad いや、それでいいんですよ(笑)
一同 (笑い)
中川 それこそ生まれた時から、父と母が仕事している姿を見て育ったので「継ぐぞ」と気負っていたわけではなく、当たり前のこととして受け入れていました。
原田 ご両親が楽しそうにお仕事をしている様に見えたのでしょうか。
中川 それはそう思いますね。ですから会社員時代も貴重な体験をさせていただいたのですが、その、自分にとって一番自然な状態に戻ったという言い方が一番合っているのかなと思います。
原田 会社員をしていた体験が今の仕事に生きている部分がたくさんあるっておっしゃっていましたもんね。
中川 はい、めちゃくちゃありますね。
Tad 広紀さんの代になって、新しい取り組みや、こんな体験を新しく付け加えてみようといったチャレンジもされているのですか?
中川 2017年にキャンプ場をオープンさせていただきました。元々、キャンプ場を手掛けたかったのではなく、たまたまご縁があって、キャンプ場を運営しませんかと声がかかり、その時に面白そうだなと思ったのと、貸別荘の運営の延長線上でできるんじゃないかということで始めました。結果的に新しい分野に挑戦したように見えるのですが、そうではなく、既存の積み重ねの延長線上に出合いがあって今があるなという風に感じています。
電源付きのキャンプサイトも用意されている。
Tad 手元のパンフレットには、もつ鍋やカキ貝のバーベキューとか冬のバーベキューが紹介されていてとてもおいしそうです。キャンプやアウトドアって夏のものだという勝手なイメージを持っていましたが、冬のお客様のニーズも増えていますか?
中川 ここ数年で、肌感覚で増えているなと分かるくらい増えていますね。
Tad それは施策を打って増やせたっていう実感があるのか、それとも、自然と増え出したのかどちらでしょう。
中川 もちろん、僕たちも少しでもお客様に喜んでいただけるように、カキ貝などのメニューを増やすなど工夫はしています。しかし、時代として、少し前は限られた人の楽しみだったキャンプやアウトドアが一般化してきたことによって、「冬にキャンプ?」と驚くのではなく、「ああ、冬も行くんだ」と受け入れる感覚ができてきたと思います。その流れの中で、冬でもバーベキューをされる方々が増えているのだと思います。
原田 パンフレットにも「冬の時期対応のバーベキュー場完備」って書かれてありますものね。寒さ除けの対策もされたバーベキュー場にしていらっしゃる。
中川 冬にもバーベキューされるお客様がいらっしゃって、ご自分達でブルーシートを使って寒さ除けをされていたんですよ。それを見てなるほどな、と思ったのと、逆に、そういうことをご提供できれば冬でもバーベキューを楽しんでいただけるんじゃないかなと思って。
Tad いや、すごいですね。新しい商売のチャンスをお客様に教えていただいたということですもんね。
中川 そうですね。
原田 能登に色々な方が来てくださるわけですけども、地域的なことをいうと、今、少子化や過疎化に向き合っていく必要がある状況の中で、中川さんご自身は、このお仕事をしていくにあたりどんなことを考えてらっしゃるのですか?
中川 能登の志賀町に帰ってきて仕事をさせていただいていますが、能登の人、皆さん口を揃えて、「人口も減ってくし、人の交流もなくなってきて、段々過疎化していくのを実感する」と言うんですよね。僕たちが中学生だった20年ほど前は同級生が200人ほどいたのが、僕の長男が5歳で、同級生は100人ほどなんです。
Tad 半分くらいになっているんですか。
中川 はい。それで単純な話、僕たちの世代は友達が200人できる可能性があるのですが、長男の場合は100人。そうなると色々な考えに触れるチャンスが僕たちは200回だったのに今の子供は100回しかないんですよ。それは子供たちが様々な機会損失をしているような気がしています。それで、町として、能登として、どうしていくかと考えた時には人に来ていただくしかないんですよね。今は僕が貸別荘やキャンプ場を運営することで人に来てもらう機会創出になればいいなという思いを持って取り組んでいます。
Tad 遠方から訪れる人を含めて、貸別荘に来てくれた方々に志賀町に対して良いイメージを持ってもらい、地元の人との交流や触れ合いの機会を作っていくことを目指していかれるのでしょうか。
中川 また来たいと思ってもらえるような、別荘であり、キャンプ場であり、町そのものであり、という風になっていければと思っていますね。
原田 貸別荘には、毎年来られるリピーターの方はいらっしゃいますか?
中川 本当にありがたいことに、毎年定期的に来てくださる方もいますし、それこそ数カ月単位で来てくれる人もいらっしゃいます。
多くの施設がペットOKなのも人気の理由。
原田 そうなんですね。能登を盛り上げていきたいと思う仲間たちと共同で頑張っていきたいという思いもおありでしょうか。
中川 先ほど触れてくださった、もつ鍋やカキ貝ですが、例えばもつ鍋は、自分たちで作っているわけではなく、先輩が居酒屋さんをされているのでお願いしてご用意いただいています。能登カキは2つ上の先輩が隣の七尾市で牡蛎を扱っているので、そことのおつきあいで。
Tad 地域総出でお客様をお迎えして、それが地域の発展や交流、文化的なものにつながっていくといいですよね。

ゲストが選んだ今回の一曲

ゴダイゴ

「銀河鉄道999」

「僕の長男が大の鉄道好きなのでこの曲を選びました。休日には一緒に鉄道を見たり乗ったりして、車輛名などを教えてもらっていますが、その時間はかけがえないものだと感じています」

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに株式会社ナカガワ代表取締役中川社長の中川広紀さんをお迎えしました。いかがでしたか原田さん。
原田 ご両親がお仕事をする姿を見て、自然と自分がこの仕事を継ぐんだと思ったとお話しされていましたけれど、今は中川さんご自身が、故郷の志賀町に多くの人に来てもらうために仲間と楽しそうに仕事されているんだろうなというのが伝わってきました。
Tad そうですよね。
原田 Mitaniさんはいかがでしたか?
Tad 最後に過疎化のお話がありました。住民数や世帯数の減少は間違いなくありますが、志賀町に訪れる人を増やすことで人と人との交流が生まれたり、経済が回ったりすることにつながっていくという話の中に、使命感のようなものを感じました。リピーターの方も多く、お客様から気づかされることが多いとおっしゃっていましたが、お客様のご要望を一つひとつ真摯に受け止めて実現されていると感じました。例えばお客様が冬にバーベキューをする時に、ブルーシートで囲っているのを見て、暴風対策をした冬季対応のバーベキュー場にされたことなどは、観察眼がなければできないなと思いました。冬でもバーベキューやアウトドア体験ができる『ハートランドヒルズ』。僕も今度家族や友達と行ってみたいと思います。

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