後編

時代に合わせた日本酒の魅力を提案。

第2回放送

株式会社福光屋 専務取締役

福光太一郎さん

Profile

ふくみつ・たいちろう/1978年 石川県金沢市に福光屋14代目として生まれる。不動産開発会社、アパレルメーカーでキャリアを積み、2010年 福光屋に入社。2012年 専務取締役に就任。2018年には公益社団法人金沢青年会議所理事長を務める。

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インタビュー前編はこちら

Tad 2019年10月5日に開催された『サケマルシェ』は、毎年恒例のイベントですよね?
福光 年に一度、開催しています。
(※2020年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため開催中止)
Tad 『しいのき迎賓館』の「しいのき緑地」に、石川県内の日本酒の酒蔵さんが一堂に集まるんですよね。
福光 そうですね、石川県内のほとんどの酒蔵が参加しています。毎年このイベントでは、非常にたくさんの方々に日本酒を楽しんでいただいていますが、とても良いイベントだと思います。
原田 いろいろな酒蔵のお酒を一度に楽しめる機会というのは、なかなかないですからね。
福光 そうですね、年に1回のこのイベントだけです。
Tad 石川県の方々の暮らしの拠点がどんどん郊外に移っているなかで、街の中心地に集まって、知っているようで知らない石川の日本酒をいろいろ飲み比べして、おしゃべりしながらお料理も楽しめるイベントというのは、他になかなかないんじゃないですかね?
福光 あくまでカジュアルに日本酒が楽しめるイベントにしています。日本酒の敷居が高いイメージや、おじさん臭いイメージを払拭するようなイベントとして実施しています。
『サケマルシェ』での一コマ。石川県内の酒蔵の地酒が楽しめるほか、人気飲食店の料理も味わえる。
Tad ところで前回は、『福光屋』さんの歴史や日本酒の造り方などを伺い、どんな酒蔵なのかというお話をお聞きしました。今回は、太一郎さんがご入社された2010年以降のお話を伺いたいと思います。まず、太一郎さんが入社したとき、会社は今と違う風だったんですか?
福光 会社のかたちとしてはあまり今と変わっていなかったのですが、当時は父が体調を崩していた時期でした。実はそれが理由で私が金沢に帰ってきたのですが。ですから社長が不在の状態で、少々大変でした。社員の気持ちの面も含めて、ちょっとバラバラとしたところがあったように思いますね。
Tad 社長であるお父さんの松太郎さんが不在の時期に帰ってこられたんですね。
福光 それで私が急遽入社して、役員になりました。研修をしながら社員の皆様と話をさせてもらって、それぞれの思いをお聞きしていましたが、当時はなかなか大変だったなと思いますね。
Tad 社員の皆さんからお聞きされた思いというのは、どのようなものだったんですか? 酒造りに取り組むうえでの心構えとか、気持ちとか?
福光 そうですね、酒造り以外にも営業部門やいろいろな部門があるのですが、皆さんちょっと気持ちがバラバラとしていたな、と思いますね。
Tad なるほど。そんな大変な時期に帰ってこられたということを私も今初めて伺いましたけれども。その他には、どんなことに取り組まれてきたんですか?
福光 そうですね、基本的には、自分にしかできないことをやろうと思って仕事をしています。私がいなくても会社は回るのですが、例えば、いろんな人脈を形成しながら様々な仕事をつくっていくことや、新しい方向性を示していくことは、私にしかできない仕事だと思っていますから、そういったところに力を入れています。
Tad しっかり会社の方針を示されたりしているんですね。
福光 社長も一緒に考えていますね。あとはブランディングなど、私がこうした方がいいな、というものをいろいろ考え、社長と相談しながら進めています。
原田 先代と当代の方との考え方が違うということはよく聞きますが、『福光屋』さんでは、その辺はどうなんでしょう?
福光 前回申し上げたとおり、『福光屋』では新しい試みをいろいろと行っています。そういうところでは、社長の方向性にすごく共感できるんですよね。
Tad 太一郎さん自身が共感されているんですね。
福光 社長はデザインなどにもすごくうるさいというか、気を遣っていて、常にアンテナを張っています。そういうところもとても共感できるな、と思いますね。
Tad ロゴマークなどもかっこいいですよね。『福光屋』さんの日本酒のラベルやボトルも、とてもかっこいいです。パッケージ全体がしっかりデザインされているというか、何かボトルを開封する瞬間までデザインされているような、そんな感じがします。
福光 うまいことおっしゃっていただき、ありがたいです(笑)
原田 すごくかっこいい感じのものから、ちょっと脱力したような、ほわんとした優しい感じのものまで、そのときどきの気持ちやシーンに合わせて選べるデザインってすごいなと思います。
Tad デザインについては、代々そういった考え方なんですか?
福光 いや、今の社長が革新的に変えたんです。普通はひとつの酒蔵につき1ブランド、というケースが多いんですが、うちはブランドがすごく多いんです。様々なニーズに合わせてブランドを分けているんですが、もちろんデザインもそれぞれに合わせて変えています。やはりそれぞれのブランドにフィットしたデザインを意識して、つくっています。
Tad 日本酒というのは液体ですし、飲めば消えていっちゃいますよね。でもそこにデザインというものをきちっと付与されているのは、本当にすごい。当時はきっと革新的だったんでしょうね。今はデザインにこだわったお酒はいくつか見ますが、松太郎社長は先駆者のお一人だったんだろうな、という風に思いますね。
福光 そうなんだと思いますね。
原田 そして『福光屋』さんのお店も、お洒落で女性でも気軽に入れますよね。お酒以外のものもいろいろ選べて良いですよね。女性から「あのお店いいよね、お洒落だよね」ってよく聞きますが、店舗もやはりデザインを重視してつくられているんですか?
福光 そうですね。1999年に初めて直営店を出しました。それも銀座に路面店を出しまして。当時は「これからは女性に日本酒を飲んでいただきたい」という思いがあって、お店も女性向けのデザインにしましたし、商品構成も、日本酒にまつわるライフスタイルの提案というコンセプトにしました。その結果、今では8割が女性のお客様です。
原田 そういう意味では狙ったとおりになっているということですね?
福光 ありがたいですね。
原田 ライフスタイルの提案というと、またちょっと新しいですね。お酒にまつわる生活の提案、ということですか?
福光 お店では、お酒だけじゃなくて、例えば横に酒器が並んでいます。そうすると、この酒器で飲んだら、よりお酒がおいしいだろうな、と想像されると思います。おつまみなども揃えていますが、お酒を中心として、周辺のいろんな要素も一緒にご提案させていただくことで、お酒を飲むという行為に対してテンションを上げていただく。そういうところが大事かなと思います。
Tad まんまとハマってますけどもね(笑)
原田 本当に(笑)
Tad ライフスタイルのご提案は大成功なんじゃないでしょうか。東京では銀座以外にも、何店舗かされていますよね?
福光 銀座の路面店は移転して、今は銀座の『松屋』さんに入っています。あとは六本木の『東京ミッドタウン』の地下ですとか、二子玉川の『高島屋』さんの地下1階、丸の内の仲通りにも、2年ほど前に路面店をオープンしました。
Tad たくさん出店されて、すごいですね。
福光 都内4店舗と金沢2店舗になります。
原田 都内の方が多いんですね。
Tad 東京ですと、やっぱり東京や全国の方、あるいは海外の方にも発信力がありますよね。
福光 そうですね、情報発信の拠点というか。
フランスで開催される日本酒コンクール「Kura Master」審査委員長グザビエ氏との一枚。
Tad 太一郎さん自身が、あるいはお父様と力を合わせて、これからどんな風に会社を展開していきたいか、どんな商品を世に送り出していきたいか、聞かせていただきたいていいですか。
福光 はい。前回も少しお話をしましたが、「米発酵会社」として、日本酒を基本に、化粧品、食品を3本柱として展開していきたいです。お米の発酵って、まだまだすごいパワーが秘められているので、その可能性をもっと引き出して、少しでもお客様の生活を豊かにするような商品を作っていきたいと思います。
Tad お米や発酵の力は、まだまだこんなもんじゃないんだ、ということですか。
福光 発酵のメカニズムについては、まだ解明されてない部分が、たくさんあると思いますよ。
原田 そうなんですか、すごいですね! そしてまた他のジャンルの方とのコラボレーションも、積極的にしていくおつもりなんでしょうか?
福光 はい、そうですね。お酒もいろんな方とコラボレーションしながら販売していますし、それは非常に大切だと考えています。その他、大切にしているのは、ペアリングという考え方です。
Tad お食事と合わせるペアリングですか?
福光 日本酒とお食事を合わせるペアリングですね。ワインの世界だったら、そういったワインペアリングというのは当たり前ですけど、やはり日本酒もこれがちゃんとできないと、これからはダメだろうという風に思っています。ですので、日本酒とお食事をいかにうまく合わせるかというノウハウも、しっかりと勉強しています。
Tad 考えてみれば、懐石料理みたいなものって、一品一品順番にお料理が出されるわけじゃないですか。とすると、ペアリングという考え方はすごくフィットしそうですよね。
福光 そうですね、一品一品の料理に合わせて日本酒を変えられるという方はいらっしゃらないと思いますが、だけど本当は、そのお料理に一番合う日本酒が存在するわけですよ。
Tad そんな風に考えたことなかったですね!
福光 そうやって食べると、お酒もお料理もすごくおいしく食べれるんですよね。ワインでは当たり前になっていますが、日本酒でもそれがしっかりとできるようになれば、もっともっと楽しくなるな、と思います。
原田 それが当たり前になる時代もやって来るかもしれないですよね。
Tad お酒の飲み方のスタイル自体も、やはりまだまだ新しい方法があるんじゃないかということですよね。
福光 そう思います。

ゲストが選んだ今回の一曲

Mr.Children

「蘇生」

「何度でも何度でも僕は生まれ変わっていく」というサビの歌詞があるのですが、会社も同じように、何度も何度も生まれ変わって、どんどん新しい会社になっていくということが大切だと思っています。守るだけじゃなくて、革新していく。そしてそれがやがて歴史になっていく。そういう思いを、これからも大事にしたいなと思います。

トークを終えてAfter talk

Tad 今回はゲストに『福光屋』専務取締役の福光太一郎さんをお迎えして、会社で取り組まれていることについてお話を伺いましたが、いかがでした、原田さん?
原田 長く続いている老舗ですけど、変化を恐れず常に変わり続けている、というところがすごいなあと思ってお聞きしていました。
Tad 本当ですね。やっぱり『福光屋』さんというと酒蔵の中では老舗ですが、「老舗」という言葉のイメージからはなかなか想像がつかないような革新的な取り組みをいろいろとされているということを改めて知りましたね。
原田 日本酒の世界も、これからもっと広がりそうですよね。発酵とお酒の可能性を常に探求してらっしゃるんだなぁということも感じました。
Tad まだ解明されてないこともあるって、おっしゃってましたからね。
原田 Tadさんは、お話の中から気づかれたこととか、学んだことはありましたか?
Tad 繰り返しになりますが、やはり、ひとつの同じ仕事をやり続けるということだけではなく、お酒の飲み方とか使い方を時代に合わせてアップデートさせているということが、素晴らしいと思いました。だからこそ長く続いていると思いますし、変わり続けることで、時代に受け入れられる商品や会社であり続けられるのかもしれないな、ということを学ばせていただきました。ありがとうございました。

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